平成19年事例Ⅰ(中小企業診断士 2次試験の与件文)


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 A社は、首都圏、名古屋、大阪で店舗展開しているインポート・ブランドのアクセサリー販売業者である。現在展開している15店舗のうち1店舗は、東京都心のファッション情報の中心地ともいえる地区の直営路面店であり、それ以外の14店舗は、立地条件に恵まれた有名百貨店や大手ショッピングセンター内のインストアショップである。
 資本金は2,000万円、2006年の売上高は6億円、営業利益は約1,600万円である。従業員は66名であり、その内訳は、正社員15名、契約社員47名、アルバイト4名である。正社員のうち、2名は男性管理職で、それぞれ営業管理・総務業務と、商品企画・輸入業務を担当している。2つの部門には、正社員2名ずつが配置され、アルバイト2名ずつが業務補助者として配置されている。それ以外の従業員は、基本的に店舗で販売活動に従事している女性販売員であり、平均年齢は28.8歳で、ジュエリー業界やアクセサリー業界での販売員としての経験年数の平均はおよそ7年、社歴の平均は4年程度である。女性の正社員の多くは専門学校あるいは短大、4年制大学出身者である。彼女達は、契約社員に比べて学歴は高いが、年齢は相対的に低く、業界での経験年数も少ない。各店舗の店長は、正社員、契約社員に関係なく任命している。
 A社が取り扱っているアクセサリーは、日本国内市場に関して独占販売契約を結んでいる2名の外国人デザイナーがデザインしたもので、A社はそれらを輸入し、Xブランド、Yブランドとして販売している。商品の仕入価格は、販売価格のおよそ40%を目標としている。2名のデザイナーのアクセサリーは、海外有名百貨店でも取り扱われており、デザイナーの知名度やブランドの認知度は日本市場よりも海外市場での方が高い。世界市場で売られている定番品以外の、シーズンごとに展開される商品の企画・デザインに関する打ち合わせは、基本的に創業者でオーナーの社長が担当している。
 A社を創業する以前、社長は有名アパレルメーカーに勤務しており、バブル経済最中の1990年に退職して、インポート・ブランドの女性用服飾、ジュエリーやアクセサリー、雑貨品などを扱うセレクトショップを開業した。その後、インストアショップでの展開によって数店舗を開店するまでに事業を拡大した。1997年、取扱商品の中でも人気のあったXブランドだけを扱うジュエリー、アクセサリーの専門店に業態を変更した。その3年後にはYブランドの輸入販売も手がけるようになり、主要都市でインストアショップを次々に開店した。
 現在、平均単価10万円を超える高級アクセサリーであるXブランドだけを取り扱う店舗は5店舗、平均単価3万円程度で若者をターゲットとしたYブランドだけを取り扱う店舗は6店舗、Xブランド、Yブランドの両ブランドを取り扱っている店舗は、直営路面店を加えて4店舗である。各店舗の従業員は、インストアショップで2~3名、直営路面店で6名である。従業員の年齢、勤務経験は、Xブランドのみを取り扱っている店舗の従業員の平均年齢、業界経験年数でともに高く、Yブランドのみを扱っている店舗の従業員は平均年齢、業界経験年数ともに低い。
 A社が事業展開しているジュエリー、アクセサリーを含めた宝飾品市場の近年の市場動向をみると、2000年を前後して縮小傾向にあったが、2004年を境にして好転しつつある。1990年代初頭のバブル経済崩壊直前の市場規模にまで復活するような好業績を期待することはできないものの、わずかながら拡大傾向にある。近年の日本経済の景気回復の追い風の中で、今後、業界全体の業績も改善していくことが期待されている。とりわけ、インポート・ブランドの市場拡大は顕著であり、その傾向がA社の業績改善にも好影響を及ぼしていると考えられる。
 もっとも、A社が取り扱っている2つのブランドの国内での知名度は、有名インポート・ブランドのように高くなく、限定的な市場で知られているニッチ・ブランドである。その点でいうと、今後、A社がいかに2つのブランドの認知度を高めていくか、すなわち、いかにブランド力を高めていくことができるかが大きな経営課題である。とはいえ、企業規模の点からみても、ブランド認知度の向上と確立のため多額の販売促進費用を継続的に負担していくことは現実的ではないのも事実である。
 こうした事業環境の下で、A社の業績の回復をさらに促進していくための施策を模索する中で、社長は2名の管理職と相談をして、従業員の意識や満足度の調査を実施することにした。その結果、従業員の多くがA社に対して相対的に高い満足度を示していることが判明した。全般的にみると、従業員は、「A社のブランド・イメージが高級」であり、「販売価格や品質に関しても適正である」と考えていた。また、給与や賞与などの労働条件、人事異動や昇進昇格などの制度に関する満足度も相対的に高く、社内の人間関係や職場の雰囲気に関しても自由闊達であるなど比較的良好であるとの回答が多く、全体的に従業員満足度には大きな問題がないと判断された。
 しかし、さらに分析を進めると、いくつかの問題点が抽出された。ブランド別(Xブランド:Yブランド:両ブランド)、チャネル別(インストアショップ:直営店)に分類して分析すると、それぞれの間に統計的に有意な差を示す項目が存在していることが分かった。
 ブランド別分析では、Xブランドのみを取り扱う店舗に勤務する従業員の労働条件に対する満足度が、それ以外のブランドを扱っている店舗に比べて低いことが判明した。特に、給与水準、業績への給与の反映度などの項目で、その差は顕著であった。また、チャネル別分析では、責任権限の委譲や部門間連携の円滑さ、意思決定の迅速性に関する項目で、直営店に比べてインストアショップで勤務する従業員の満足度が相対的に低いことが判明した。さらに、社歴別に従業員を分類して分析した結果、相対的に社歴の長い従業員の満足度が低いことが明らかになった。とりわけ、自らの将来像や能力改善に関する項目で満足度が顕著に低く、上司に対する項目でも不満を示す社員のポイントが高くなっていたのである。
 A社では、ここで示された組織・人事に関わる問題を改善し、業績向上を実現するために中小企業診断士にアドバイスを求めることにした。

設問文

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