現場を知らなくても大丈夫‐事例Ⅲへの親しみ方 by のぞひな

タキプロ16期の のぞひな と申します。
10月の2次筆記試験受験者の皆さま、大変お疲れ様でした。長く苦しい勉強期間を終えて一息つかれていると共に1月14日の結果発表まで心落ち着かない日々を送られているのではないかと思います。
2次筆記試験合格者の皆様にはまだ2次口述試験が待っていますが、大丈夫です。2次筆記試験合格発表後でも十分に間に合います。
また一部の方は、令和8年度合格に向け既に勉強を開始されているかもしれません。
今回のテーマは、「事例Ⅲ」です。来年度の試験まで少し時間に余裕がある時期かと思いますので、机上の勉強、過去問から離れ、少しお気軽なお話を共有させていただければと思います。
よろしくお願いします。
■はじめに
皆さんは、事例Ⅲに対し、どのようなイメージを持たれていますか? 試験対策としての事例Ⅲは比較的他事例に比べて取り組みやすいのではないかと思います。
「SWOTを見極め、弱みを克服して、強みを機会に活かしてコスト、生産性を改善し、売上を拡大する等の解答の方向性」や、「PQCDESME、4M、ECRS、DRINK等の切り口」を一度習得すると他事例と比べて安定した得点がとれる、あるいは大きく外すことは少ない事例だと思っています。但し、製造業の現場経験がないと与件文に書かれた現況、起きている事象になかなか具体的なイメージがわかないのも事例Ⅲの現実ではないでしょうか。
「旋盤、フライス盤、ボール盤、研削盤って汎用工作機械だったな。でも違いってなんだったけ。NC工作機械とマシニングセンター使えば省人化出来るな。でも自動工具交換まで必要かな。」等々
私は、数年前まで銀行に勤務し、サービス業、製造業、建築業、中小零細から大企業まで様々な規模、業種のお客様を担当させてもらいました。財務、営業の方から商売の話を聞くことは大変楽しかったのですが、予算のプレッシャー、時間の制約からどうしても主として決算書という数字のみを通じてお客様を見ていたことが大きな反省点でした。
そうした私に転機となったのは、突然の国内自動車メーカーへの出向でした。業務内容は戦略企画部門で海外の合弁ビジネスの見直しや海外での新規工場立ち上げに従事していましたが、その間、実際に専門の担当者の方々と話し、現場を間近に見ながら、市場調査から商品企画、開発、生産(生産技術、生産管理)、マーケティング、販売までのプロセスを一気通貫に知ることが出来ました。国内外の工場で見ることが出来た席番方式で車種、仕様の異なる自動車が整然と流れていく混流生産のライン、車体外板を成形する1万トン級のプレス機の迫力、自動で工具を変えながら部品を製造していく整然と並んだ工作機械群、現場主導で生み出される改善運動など初めて見た生産現場は全てが新鮮で仕事に対し目から鱗が落ちる思いでした。日本の強みの源泉である「モノづくり」の素晴らしさを強く感じることが出来た瞬間でもありました。それが後年に1次試験の運営管理や2次試験事例Ⅲ取組へ興味を持つことが出来た源泉であったと思っています。
(但し得点に結びついたかは別問題です。。。)
とはいえ、製造業以外に従事する人間が偶然に現場に触れられる機会はそう多くはなく「製造業未経験」「工場に行ったことがない」―そんな方の方が寧ろ多数派だろうと思われます。
そこで現場は知らなくても事例Ⅲに取り組む為の「現場感」を感じられであろう書籍や動画のいくつかを今回ご紹介したいと思います。
■書籍
- 「ザ・ゴール 企業の究極の目的とは何か」(著者: Eliyahu M. Goldratt(エリヤフ・M・ゴールドラット))
誰もが知る生産管理の本質を理解する名著です。
工場の現場を舞台に、主人公が製造プラントの危機を救うため、助言者の問いかけを通じて「ボトルネック(制約)」を特定・改善し、生産性を劇的に向上させていく物語です。
1984年刊行ですが、日本語版の翻訳許可は2021年とかなり遅れ、著者自身が「もし日本語版が出たら、日本企業が強くなり世界経済に混乱が起きる」という趣旨の発言をしていたという逸話もあるそうです。この今でも生きる管理手法が既に50年も前に存在していたことが驚きです。
小説形式(読んではいませんが漫画版もあるようです)で臨場感あり大変読みやすいのですが、事例Ⅲへの活かし方としては以下の観点があるものと思われます。
・ ボトルネックの特定(工程を止めない)
・ 生産計画・受注対応の改善
・ 工程負荷・外注比率の調整(ラインバランス)
・ 仕掛在庫の削減
・ リードタイム短縮
・ 個別最適ではなく全体最適、工場全体の生産性改善
・ 部門間での情報共有、連携 - 「[ポイント図解]生産管理の基本が面白いほどわかる本」(著者:田島悟)
文章ばかりの一般的なテキストと異なり、図解を通じて「工程の流れ」「仕掛在庫・リードタイム・納期」の関係性を視覚的に把握することが可能です。
生産管理を以下の流れで体系化しており、「工場全体の姿」が非常に掴みやすい構成になっているものと思われます。
170頁程のコンパクトな本ですので気軽に読むことが可能です。
・ 受注→計画→調達→製造→出荷
・ 行程・仕掛・ライン・負荷・外注などの位置づけ
・ 現場改善の基本(5S、QC等)
■動画
動画は「現場を疑似体験する」最強のツールではないでしょうか。例えば
・ 工場見学、製造・加工までの一貫工程を紹介する動画
・ 改善活動、生産管理を解説する動画
これらを見ることで「どこに仕掛品、製品が滞留しているか」「この生産方式、機械配置は個別受注向きか否か」等、与件文を読む際の「想像力」を高めることが出来ます。以下はネットで検索して出てくるYouTube動画の一例です。
- 【最短最速】これ1本で生産管理の全てが分かる!!【永久保存版】
在庫管理、生産計画、原価管理等の生産管理を一気通貫に説明する動画です。少し専門的過ぎることと約3時間と長めの動画ですが現場でどの様なことが実際にされているかを理解することが出来ます。
(視聴時間約3時間) - これで丸わかり『トヨタ生産方式』基本から分かりやすく解説!!
ジャストインタイム・自働化を特徴とするトヨタ生産方式(TPS)の基本をわずか10分で理解することが出来ます。
(視聴時間約10分) - 【製造業】フローライン・フローショップ・ジョブショップの違いは?生産方式5タイプを徹底解説!《製造業改革の基礎知識》
生産方式の代表的な5タイプ(例えば、フローライン、セル生産、ジョブショップ、フローショップ、混流ラインなど)が構造的に説明されています。
(視聴時間約24分) - トヨタのクルマができるまで
日本最大の製造業トヨタ自動車のバーチャル工場見学です。エピソード01~14でトヨタの匠の技術を知る事が出来ます。
■おわりに
いかがでしたでしょうか。今年度タキプロ16期の皆さんが勉強法、解法プロセス、好事例、失敗事例等たくさんの役立つ情報をブログ投稿されています。
過去の投稿で今回同様に事例Ⅲにより興味を持てる為の参考となると思ったのは以下お二方の投稿です。是非ご参照されてください。
・夏の「事例Ⅲマシン祭り」 by ひらく
・事例Ⅲの苦手意識を払拭しよう! by Yuki
次回は、ののの さんの登場です。
お楽しみに!
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