事例ⅠのA社に学ぶ:「スーパー後継者」が組織の成長を止める時 by Tommy

事例Ⅰ

タキプロ16期の   Tommy と申します。  

■はじめに

試験から2カ月ほど経過して、試験勉強の厳しさから解放され、まったりとしている方も多いでしょうが、年明けには合格発表を控え、様々な思いで年末を迎えていることと思います。

今回は、事例Ⅰをテーマにした内容ということで、私の方でも今年(令和7年)の事例Ⅰの事例文を読んでみて気になったことについて少し記載していきます(今年度の事例文はこちらにあります)。 なお、私自身、設問の内容を読み込んだり、各予備校が行っている講評・解答例などを詳しく見ているわけではないので、書かれている内容にちょっと違和感があったり、試験対策に直結しないと感じる方もいるかと思います。あくまでも単なる読み物として御覧いただければと思います。

■気になったこと

試験中、A社の与件文を読み進めていて、「この後継者(社長の子息)、めちゃくちゃ優秀だな…」と感じませんでしたか?

このような、後継者がいたら社長も安心して経営を任せられますし、今後もA社は安泰だろうなと思いますよね。ただ、その一方で「優秀すぎる個人」の存在は、時に組織にとって「成長の阻害要因」となるリスクもあります。

■A社の「スーパー後継者」は何でもできすぎる

まず、今回のA社のキーマンである「社長の子息」のハイスペックぶりを整理してみましょう。

  • 地元の大学で経営学の知見を深めた後、家業に入った
  • 実験的な「X事業(家具・ペン)」の担当者として、直営店やアンテナショップでの展開を任されている
  • 新規事業(知育玩具)の責任者にも抜擢され、積極的に関与している
  • 大学で学んだ知識を活かし、SNS活用やイベント企画、ECサイトへの出店も発案・実行した
  • 地元の大学とのワークショップや共同研究も推進している

これ、まさに「スーパー後継者」ですよね。 既存の社員の多くが内装材の製造技術職や法人営業であり、長年の勤務経験を持つベテラン層であるのに対し 、彼は「経営学」「新規事業」「マーケティング」「産学連携」まで、一人で何役もこなしています。(こんな人が日本に何人いるのかとも思ってしまいます。)

■なぜ「成長」が止まるのか?

一見、順風満帆に見えるA社の新規事業ですが、事例の最後では社長が危機感を抱いています。

なぜなら、事業規模が拡大するにつれ、彼一人の力では限界が見え始めているからです 。

つまり以下の様な状況であると言えます。

  • 初期段階: 優秀なリーダーの個人的な馬力とスキルで事業を立ち上げる(成功)。
  • 拡大段階: 業務量が増え、リーダーのキャパシティが限界に達する(ボトルネック化)。
  • 組織の問題: 周囲の社員が「あの人に任せておけばいい」と依存し、ノウハウが組織に定着しない。(属人化)

知育玩具事業は市場の変化が早くスピード感が求められますが 、既存事業を支えるベテラン社員とはスキルセットや思考様式が異なり、子息に業務が集中してしまっています 。結果として、「子息の手が空かないと、何も進まない」という状況になり、組織としての成長スピードが鈍化してしまうのではないでしょうか。

■「個人戦」から「団体戦」へ

では、A社はどうすればよいのでしょうか? 言い換えると、「私たちが診断士として助言すべき方向性」はどこにあるのでしょうか?

答えは、「個人の能力(暗黙知)」を「組織の仕組み(形式知)」に変えることではないかと思います。

具体的には、

  • 次世代リーダーの育成: 子息一人の力には限界があるため、彼に続く次世代のリーダー候補を育成する 。
  • 人材の確保と再配置: 新規事業に必要な専門知識を持つ人材を確保・育成し、スキルセットの異なる事業に対応できる体制を作る 。
  • 連携の組織化: 大学や地域の木工職人とのネットワークを、子息個人のつながりにとどめず、組織として活用できるようにする 。

このような取り組みこそが、事例文の最後で社長が検討していた課題ではないでしょうか。(おそらく設問3,4あたりで問われている内容がこのような内容だったのではないかと考えます。)

■おわりに

どれほど優秀な後継者でも、一人で会社を永続的に成長させることはできません。よって、試験対策だけでなく実際の企業の支援においても覚えておきたいのは「事例企業にスーパーマンがいたら、属人化リスクを疑う」ということです。そして、このような問題に対して「属人化からの脱却」「権限委譲による組織的な対応」といったキーワードも覚えておきましょう。

次回は、ヒサ さんの登場です。 

お楽しみに! 

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