中小企業経営・政策はクイズ大会だッ! byたにけい

読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ13期のたにけいと申します。

今回は中小企業経営・政策の勉強法をお伝えします。
私が執筆した過去記事はこちらです。

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■はじめに

中小企業診断士試験の1次試験には、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策の「暗記3兄弟」と呼ばれる科目があります。これらは暗記科目であるため勉強時間、過去問の演習量に比例して暗記すればするほど実力が伸びます。

しかし、着手時期が早すぎたり、暗記すべき範囲を誤って手を広げ過ぎれば沼状態に陥ります。そして暗記3兄弟は難易度変化が大きいことも悩ましい点です。私が合格した令和3年度も難化してしまいました。

このような中、私は「定番問題を落とさない」作戦で基礎点を稼ぎ、73点を確保できました。私の記事が読者の皆さんの合格可能性を1%でも高めることに貢献できれば幸いです。

科目名がめちゃ長いので基本的には「中小政策」と呼ぶことにします。

■学習開始時期と中小企業白書

さて、中小政策はいつ頃から勉強を始めればよいのでしょうか。

私が診断士試験の勉強を始めたのは令和2年5月ですが、中小政策の勉強に着手したのは令和3年4月中旬、ゴールデンウィークの少し前からです。中小政策は暗記科目であるため、あまり早く着手しても8月22日の1次試験まで記憶を維持できないと考えました。

また、ゴールデンウィークのまとまった時間を利用して集中的に勉強し、5月末に実施されるTAC模試で実力を図る狙いもありました。暗記量は多いのですが直前期に追い込み可能であるため、特に7科目同時に受験する方は最後に着手するのがよいと思います。

中小政策は中小企業庁が毎年6月頃に発行する「中小企業白書」(白書)という資料の中から出題されます。そして2023年の1次試験を受験する方は、「2022年版」の白書の内容から出題されると考えてください。

「エッ!?1年前の白書から出題されるの?」と思ったあなたは鋭いです。そうです…受験年度の最新版の白書ではない点に注意が必要です。

2023年版の白書からは出題されないと考えてよいと思います。というのも受験年度の白書から1次試験に出題しようとすると、白書の発行日(6月)と1次試験の試験日程(8月)が近すぎて、試験問題の作問、問題用紙の印刷などの準備期間が確保できないと思われるためです。

2023年度の1次試験に向けて2022年版の白書が見てみたいという方は、中小企業庁のHP(下にあるリンク参照)から今すぐ無料でDLできます。どんな資料なのかパラパラと眺めてみてください。

2022年版の中小企業白書はこちらから無料で入手できます。

■教材の紹介

中小政策の教材選びについて初めにお伝えしたいことは、「テキストや問題集は各社の最新版」を使うという点です。特にこの2~3年は新型コロナの影響が大きく中小企業を取り巻く状況が激変していますし、毎年発行される白書からの出題という点からも最新版を使った暗記が必要です。

中小政策の勉強では、教材を3種類使いました。

メイン教材は「診断士ゼミナール」です。1次試験対策講座として4月中旬に配信された基本講義の動画視聴から学習をスタートしました。

6月中旬頃には「一次直前講座」として問題演習を中心とした補助教材が配信されました。この補助教材は定番問題がギュッと詰まった非常に役立つ資料になっており、常に持ち歩いてスキマ時間に何度も目を通していました。

診断士ゼミナールには過去問も付属しているのですが、講師からは「中小政策は過去問はやらなくてOK。とにかく直前講座を繰り返しやって。」という指示がありましたので、素直に直前講座の教材を何度も繰り返し勉強しました。

サブ教材はTACの「スピード問題集」です。基本的に「診断士ゼミナール」を信じて勉強していましたが、先ほど書いたように中小政策には難易度変化があるため、セカンドオピニオンとしてスピード問題集をやりました。

診断士ゼミナールの教材と同じような問題も当然ありますが、同じテーマでも問われ方が違う問題やTACオリジナルの問題があるので、対応できる問題の幅が広がります。独学派の方も2社以上の異なる問題集に取り組むことをオススメします。

学習開始が4月中旬ですので、診断士ゼミナールの教材やスピード問題集は間隔を空けずに6~7回転しています。画像はスピード問題集ですが、4月17日の1回転目は不正解!何度も繰り返し問題を解き、試験1週間前の8月16日には確実に正解できるようになっていますね。

この科目は「クイズ大会」と言っても過言ではありません。スピード問題集に収録されているような定番問題は確実に正解できるように訓練しましょう。

3つ目の教材は模試のフル活用です。診断士試験の勉強期間で私が唯一受験した模試がTACの「1次公開模試」です。

2,000人以上が受験するらしいという規模が魅力で、勉強は未完成でしたが腕試しのつもりで5月末に受験しました。このTAC模試は解答・解説集がとても充実していましたので、画像のように全問正解になるまで3回転させました。

診断士ゼミナールの教材とスピード問題集の定番問題に大手受験校の模試の新作問題が加わることにより、さらに対応できる問題の幅が広がります。模試は他社さんのものでも同様の効果があると思います。

■どんな問題が出るのかな?

中小企業経営・政策という科目名を改めて見ると、「・」(ナカポツ)が入っていますね。

前半の「中小企業経営」は白書に収録されている「統計」について出題され、後半の「(中小企業)政策」は中小企業に対する様々な「支援施策」について出題されます。

では、ここで実際の問題をいくつか見てみましょう。令和4年度第1問は中小企業の従業者数と付加価値額を問う定番問題です。

令和4年度第1問

 総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査」に基づき、企業規模別の従業者数(会社及び個人の従業者総数、2016年)と付加価値額(会社及び個人の付加価値額、2015 年)を見た場合、中小企業に関する記述として、最も適切なものはどれか。
 なお、企業規模区分は中小企業基本法に準ずるものとする。

ア 従業者数は約2,000万人で全体の約5割、付加価値額は約100兆円で全体の約7割を占める。
イ 従業者数は約2,000万人で全体の約7割、付加価値額は約135兆円で全体の約5割を占める。
ウ 従業者数は約3,200万人で全体の約5割、付加価値額は約100兆円で全体の約7割を占める。
エ 従業者数は約3,200万人で全体の約7割、付加価値額は約100兆円で全体の約5割を占める。
オ 従業者数は約3,200万人で全体の約7割、付加価値額は約135兆円で全体の約5割を占める。

なんだか眼がチカチカしてきますね…この問題には人数、割合、金額の3種類が登場しますが、このような問題は数字の暗記と同時に「規模感やシェア」を意識すると記憶に定着しやすいです。細かい数字を忘れてしまっても規模感やシェアを意識していれば、明らかに違うものをハジくことができます。

中小企業は、日本の企業数の99.7%を占めていますが従業者数のシェアは7割で、付加価値額のシェアは大企業と半々なのです。逆に捉えると企業数がわずか0.3%の大企業で3割もの人が働き、付加価値額の約半分を生み出しているのですね…このように規模感やシェアを意識します・・・正解は「オ」ですね。

次の令和4年度第6問は、開業率と廃業率を問う定番問題です。

令和4年度第6問

 厚生労働省「雇用保険事業年報」に基づき、2000年度から2019年度の期間について、わが国の開業率と廃業率の推移を見た場合の記述として、最も適切なものはどれか。
 なお、ここでは事業所における雇用関係の成立を開業、消滅を廃業とみなしている。開業率は当該年度に雇用関係が新規に成立した事業所数を前年度末の適用事業所数で除して算出する。廃業率は当該年度に雇用関係が消滅した事業所数を前年度末の適用事業所数で除して算出する。適用事業所とは、雇用保険に係る労働保険の保険関係が成立している事業所である(雇用保険法第5条)。
ア 開業率は、2000年度以降、廃業率を一貫して上回っている。
イ 開業率は、2000年度から2009年度まで廃業率を一貫して上回り、2010年度から2019年度まで廃業率を一貫して下回っている。
ウ 開業率は、2000年度から2009年度まで廃業率を一貫して下回り、2010年度から2019年度まで廃業率を一貫して上回っている。
エ 開業率は、2010年度から2019年度まで低下傾向で推移している。
オ 廃業率は、2010年度から2019年度まで低下傾向で推移している。

開業率と廃業率の統計調査には厚生労働省の「雇用保険事業年報」と総務省の「経済センサス活動調査」2種類があります。どちらの調査のデータについて問われているのか問題文をよく読む必要があります。下図は、白書(2021年版)から引用した雇用保険事業年報データに基づくグラフです。

【出典】中小企業庁 2021年版中小企業白書Ⅰ-140

この問題はこのグラフの形を「知っているか知らないか」になってしまいますが、定番問題は正解率も高いですから落とすことは許されません。グラフの形や数字を暗記し、問題集を何度も反復して、業種毎の順位や近年の増減状況などを「呼吸するように正解できる」状態が望ましいです。正解は「オ」です。

次の令和4年度第21問(設問1)は、下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)の適用要件を問う定番問題です。

令和4年度第21問(設問1)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
下請代金支払遅延等防止法(下請代金法)は、親事業者の不公正な取引を規制し、下請事業者の利益を保護することを目的として、下請取引のルールを定めている。
中小企業庁と公正取引委員会は、親事業者が下請代金法のルールを遵守しているかどうか、毎年調査を行い、違反事業者に対しては、同法の遵守について指導している。
(設問1)
文中の下線部が適用される取引として、最も適切なものはどれか。
ア 飲食業(資本金500 万円)が、サービス業(資本金100 万円)に物品の修理委託
をする。
イ 家電製造業(資本金500 万円)が、金属部品製造業(資本金300 万円)に製造委
託をする。
ウ 衣類卸売業(資本金1,500 万円)が、衣類製造業(資本金1,000 万円)に製造委
託をする。
エ 家具小売業(資本金2,000 万円)が、家具製造業(資本金1,500 万円)に製造委
託をする。
オ 電子部品製造業(資本金1 億円)が、電子部品製造業(資本金3,000 万円)に製
造委託をする。

この問題も定番中の定番ですから、問題集を反復して「百発百中で正解できる」状態が望ましいです。

都道府県の中小企業診断士協会に入会すると「診断士手帳」が支給されます。私は令和4年12月に入会したのですが、手帳をパラパラと見ていたら下請事業者の早見表が収録されていました!同じような早見表は各社のテキストや問題集にも収録されています。診断士手帳に早見表が収録されるくらいの定番ネタということですね。

上記の問題を早見表に当てはめると、①の資本金1千万超3億円以下の親事業者が、資本金1千万以下の下請事業者に物品の製造を委託する場合は下線部の取引にあたりますね。正解はウです。

■難易度変化への対応

中小政策は年度によって難易度変化が大きいですが、残念ながら難化に対する有効策はありません。ただし、難しい問題は周りの受験生も同じように難しいと感じていますので、動揺する必要もありません。

「うわ~!今年は難しい!」と思ったとき、最も大切にすべきは「定番問題を絶対に落とさない」ことです。厳しい状況下では守りをしっかり固める…これは他の科目にも共通する作戦です。定番問題で正解をキメることはもちろん、マークシートへの記入ミスを絶対にしないように十分に確認しましょう。

定番問題以外は、最近の中小企業を取り巻く情勢を踏まえて「現場対応」により何とか正解に近づく努力をすることになります。この「現場対応力」の強化のために日頃から中小企業関連のニュースに関心を払うことや、中小企業白書の概要資料を確認することによりトレンドを掴むことは大いに意味があると思います。

最後の手段になりますが、お手上げバンザイの問題は「鉛筆コロコロ」で見切りをつけましょう。分からんものは分からん…定番問題のチェックに時間を使う方が合格に近づきます。

■タイムマネジメント

タイムマネジメントについては、1次試験の7科目中、唯一時間に余裕を持てる科目です。

問題数で29問程度、選択肢ベースで42肢程度と数は多いのですが、知っているか知らないかという「クイズ」ですから、どんどん問題を消化することができます。ゆっくり取り組んでも1時間くらいで一通りマークシートを埋められるのではないでしょうか。

2日間の試験日程の最後の科目ということもあって、途中退出する方も多数いました。しかし私は途中退出をオススメできません。1年に1回しかない試験なのです。与えられた時間を自ら放棄するほどモッタイナイことはありません。

定番問題は絶対に落とせませんので何度も確認し、氏名を書いたか、マークミスはないか、それはそれは念入りにチェックしました。「現場対応」が必要だった問題も、最後まで考え抜いて最も適切と考えられた選択肢を選びました。(マジ分からんという問題は鉛筆コロコロです)

まさかの凡ミスで悔いを残さないように最後の1秒まで時間を大切にしてください。これは他の科目や2次試験でも同様です!

■勉強へのモチベーション維持

私は国家公務員なのですが、中小企業金融に関する業務を担当していた際、商工会議所や商工会、日本政策金融公庫、中小企業再生支援協議会といった中小企業支援機関の方々とお会いして様々なお話を伺う機会がありました。

診断士資格を取得して支援機関で活躍されている方にもお会いすることができ、このことが診断士試験を受験しようという動機付けとなり、「憧れの診断士」の姿が試験勉強へのモチベーションになっていました。

中小企業の支援施策に馴染みがない方もいると思いますが、そんな方は各支援機関のHPを一度見てみてください。テキストの活字としてではなく現実社会のリアルな存在として認識することができます。診断士になったら支援機関から仕事を請け負うことになるかもしれませんよ!

私も中小企業庁、日本政策金融公庫、商工会議所、中小企業基盤整備機構、事業承継・引継ぎ支援センターなどのHPを確認して、テキストに掲載されている施策を復習しました。

HP以外では、商工会議所や地方経済産業局(下の画像は、名古屋市にある中部経済産業局)を訪ねて支援機関や支援施策のパンフレット類を入手することもできます。訪問が可能な方は一度足を運んでみるのはいかがでしょうか。

Twitterをフォローしていたら、支援機関や中小企業診断協会の建物巡り(聖地巡礼)をしている受験生の方もいるようでした。気分転換を兼ねた聖地巡礼も勉強のモチベーション維持につながりそうですね!

■おわりに

さて、私の中小政策の勉強法の記事はいかがでしたでしょうか。

暗記が苦手な方は多いです。人は忘れる生き物ですが、何度も繰り返せば必ず定着します。暗記科目と上手に付き合って合格をつかみ取ってください。


次回はたべちゃんさんの登場です。
お楽しみに!

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