【診断士2次 事例Ⅰ~Ⅲ対策】50歳から始める、フレームワーク徹底マスター by しばちん From TKPエイジレス

タキプロブログの読者のみなさん、こんにちは!
タキプロ14期、そしてTKPエイジレスメンバーのしばちんと申します。

「TKPエイジレス」は50代以上のタキプロメンバーで構成されたユニットで、エイジレスの名のもとに「挑戦意欲さえあれば実年齢なんか知るか!」の心意気で、中小企業診断士試験の受験生の皆様に役立つ情報を発信していくことを企んでいます。

さて、先日アップされた、TKPエイジレスの記念すべき初投稿記事
新ユニット「TKPエイジレス」はじめました における分析にて
◇中小企業診断士試験の受験生で50代が急増している
1次試験の合格率は50代以上と49歳以下で大きな差は無い
2次試験の合格率では50代以上と49歳以下では2倍近い差がある

という衝撃の事実が述べられています。
具体的には49歳以下の合格率が20%をやや超えるくらいなのに対して、50代以上の合格率は10%前後を彷徨っている、というのが現実です。(詳しくは上記の記事でご覧ください)

年齢からくる記憶力の衰えを考えると1次試験の方が合格率に差がつきそうな気がしますが、実際には2次試験の方で大差をつけられているという分析結果になっています。



↑ 若いもんには負けん! と思ってもデータが示す現実は非情…


こうなってしまう原因として、一説に
50代以上は与件文の記載に従わず、
自分の経験に基づく解答を書こうとする傾向があり、
その結果として得点が付かない
という意見がネット上で見られます。
(要は素直じゃなく独りよがりってことでしょうか…)


必ずしもこれが全ての50代以上に当てはまるとは思いませんが、

◇年齢が上がっていくに従い実務経験が増す
◇その分、実務での知識・経験に自信がある
◇今の職種特有の考え方が無意識レベルまで身についてしまっている

こういったことが、上記の傾向につながっていることはあり得ます。
そこで今回ブログでは、自分の経験・知識に引っ張られた解答を防ぐ方法としての事例Ⅰ~Ⅲにおける代表的なフレームワークの活用方法を考えてみることにします。

■プロフィール

◇ハンドルネーム:しばちん
◇年代・性別:50代・男性
◇職種:広告代理店勤務
◇受験歴:1次2回、2次4回
◇勉強に費やした時間:今となってはもう分かりません。

上記の通り、私は50代の多年度受験生で、かつ2次試験を突破できないがために1次試験をやり直す羽目になりました。
ちゃんと点数をもらえる解答と、そうでない解答。その違いが分からずにさまよった過去がありますので、そういう意味では50代以上の方に向けてフレームワークを語る資格があるのではないかと勝手に思っています。

診断士試験におけるフレームワークの役割①:
脱!アイデア解答

診断士2次試験と柔道の昇段試験の共通性とは?

ここで、唐突ですが例え話です。

貴方が柔道の昇段試験を受けるとして
こっちの方が実戦的だから
こっちの方が面白そうだから

という理由で、いきなり目潰し攻撃を仕掛けたり、雪崩式DDTやアルゼンチンバックブリーカーをやったらどうなるでしょうか。



↑ まずは怒られます。当然です。

もちろん怒られるだけでなく、肝心の試験自体も100%不合格になります。なぜなら柔道の昇段試験で問われるのは、あくまで「柔道の技術体系が身についているか」であって、ストリートファイトの実力ではないからです。

もちろん、貴方が「必殺!〇〇落とし」みたいな新たな柔道技を開発することなど、はっきり言って誰も期待などしていません。ここまでは常識的に考えれば分かりますよね?

それと同様に、2次試験は貴方の頭の良さや発想の斬新さではなく、中小企業診断士としてのベーシックな知識体系が身についているか、そしてそれに基づいて考えることができるか、を問うものです。

つまり1次試験で学んだマネジメント、マーケティング、運用管理、財務会計それぞれの考え方に忠実な解答なら高得点を獲得することができ、反対にその枠組みから外れた解答は…、

それって個人の感想ですよね?

という判定をされ、合格ラインに届くだけの得点を得られません。ちなみに、この手の解答は診断士としての知見ではなく個人のアイデアだけに基づいているという意味で「アイデア解答」と呼んだりします。

そんな「アイデア解答」を回避し、収まるべきところに解答を収める、それがフレームワークの役割のその1です。

診断士試験におけるフレームワークの役割②:
何を聞かれているか分からない問題への対応

実践編に入る前に、過去問を少し見てみることにします。

フレームワークの例題その①
令和3年 事例Ⅱ 第1問

2021年(令和3年)8 月末時点の B 社の状況を、移動販売の拡大およびネット販売の立ち上げを目的として SWOT 分析によって整理せよ。

これはもう、見たまんまSWOTのフレームワークを使って答える問題です。
では次の問題を。

フレームワークの例題その②
平成28年 事例Ⅰ 第1問

業績が好調であった A 社の代目社長の時代に進められた事業展開について、以下の設問に答えよ。
(設問1)当初立ち上げた一般印刷事業などの事業展開によって A 社は成長を遂げることができた。その要因として、どのようなことが考えられるか。

これも実はSWOTのフレームワークを使って答える問題です。

設問文をもう少し親切に書くと、「A社が成長を遂げることができた要因、すなわち強みを書いてね!」 という題意です。皆さん、だったら最初からそういう風に書け! と思いませんか?少なくとも受験生時代の私はそう思いました。

しかし、実際に診断士として経営者からヒアリングする際に、経営者の方が「我が社の強みはこれで…、弱みはあれで…」と、きちんと整理してから話してくれるとは限りません。そもそも、自社の特徴を当事者が客観的に分析できていない場合も想定されます。
ということは、これはもしかしたらコンサルとして会話の中の重要ポイントをしっかり汲み取れ、という試練を与えるのが試験問題の意図なのかもしれません。(あるいは、ただ単に受験生に対する嫌がらせかもしれません)

ちなみに、私が受験生時代に印象に残っているのは
「事例Ⅰの設問は特に抽象的で、何を聞かれているのか分かりにくいことが多い」
と、通信講座の講師の方が説明されていたことです。

これを聞いた当時の私の反応はというと


…というものでした。
ですが、いざ実際に試験本番(令和3年)になってみると、


↑当然、この年は落ちました。


ただ、これは今にしてみれば講師の方の説明もあまり良くなくて
「事例Ⅰの設問はどのフレームワークを当てはめればよいか分かりづらい」
とでも説明してくれれば理解も深まったのに…と、今にして思います。

つまり、

設問文を読んだだけでは、何を答えれば良いのかピンとこなくても、「この問題に対して、強みの視点で答えたらどうなんだろう…」みたいにフレームワークの視点を当てはめれば解答の方向性が見えてくることもある。

ということですね。
ここで「何を書いたらいいか分からないけど、試験時間が終わる前にとにかく思いついたことで解答欄を埋めよう」という方向に走ってしまうと撃沈へまっしぐらです。思いつきで合格できるほど、2次試験は甘くはありません。

なお、まれにストレート合格生の中に「2次試験対策はほどんどしてないけど、国語の問題と思って解いたら受かっちゃった」という方がいますが、そういう人智を超えた存在(?)の言うことは我々一般人にはあまり参考にならないので、ここでは放っておくことにします。

主なフレームワーク一覧

■事例Ⅰ~Ⅲ 共通で使うフレームワーク

◇SWOT:特にS(強み)が最重要

◇3C:一番広い視点で市場全体を見渡すフレームワーク

◇4P:製品・サービスが差別化できていないと価格競争に陥ります

◇5F(ファイブフォース):特定の取引先に依存していないかを意識


■事例Ⅰで使うフレームワーク
事例Ⅰで問われるのは、組織と人事をA社の将来のために最適化すること。
代表的なフレームワークは「さちのひもけぶかいねこ」。これは組織人事施策において考えなければならないキーワードの頭文字です。

◇人事施策
さ(採用・配置)、ち(賃金)、の(能力開発)、ひ(評価)、も(モチベーション)

◇組織施策
け(権限移譲)、ぶ(部門)、かい(階層)、ね(ネットワーク)、こ(コミュニケーション)

うじょんさん のブログにより詳しい解説があります。
こちらからどうぞ。(フレームワークの解説は記事の後半から)

■事例Ⅱで使うフレームワーク
事例Ⅱのテーマは売上の最大化。そしてそれにつながる顧客関係性強化やブランド向上施策などを導き出さなければなりません。ここでは、「ダナドコ」フレームワークが鉄板です。

◇誰に:ターゲット顧客

◇なにを:製品・サービス

◇どのように:プロモーション施策、未利用の社内資源活用、他社提携

◇どんな効果を:売上アップ、顧客関係性強化など

以上の頭文字です。
ひがしさん のブログにより詳しい解説があります。
こちらからご覧になれます。

■事例Ⅲで使うフレームワーク
事例Ⅲは公式の試験案内では「生産・技術に関する事例」となっていますが、実態としては1次試験の科目名「運営管理」の方がピッタリくるのではないかと思います。

◇QCD

◇生産管理:生産計画・生産統制・品質管理・設備管理など

◇生産性向上:5S・SLP・段取り改善、マニュアル化、標準化など

◇IT強化:データベース化、リアルタイム化、一元化、ネットワーク化、共有化(頭文字をとって「DRINK」と言ったりします)

個人的には事例Ⅲが一番あれこれ気配りしないといけないことが多い気がしますので、今回の「実践編」では事例Ⅲに一番力点を置いています。

◇おまけのフレームワーク
・つよビ
たいしたものではないですが、私が自分用に考えたものです。
事例企業においてやるべきことを極限までシンプルにすると、

強みを高めて
弱みを克服して
◇社長のビジョン、想いを達成する

というところに行き着くので、試験時間の最後の最後に解答を見直す際に
「ここに書いた解答は『つよビ』にかなっているだろうか」と思い浮かべながらチェックするのに使っていました。残り10分を切り、疲れた頭で最後の確認をするのに最適です。

なおフレームワークについて、より深堀りしてみたい方はサイト内検索「フレームワーク」でタキプロの過去記事も参照してみてください。たくさんの記事があるので目を通すのにも時間がかかりますが、その分だけ発見があるはずです。

実践編:事例Ⅰ 平成25年度 第1問(設問1)

さて、やっとここからフレームワークの実践編です。

ここで取り上げる過去問をまだ解いたことが無い方は、できれば一度でもやってみてから読み進んで頂くことをおすすめします。
最初にまず、私なりに「フレームワークってこうやって使うんだ!」という開眼のきっかけになった問題をピックアップしました。
なお、平成19年以降の過去問は1次・2次ともこちらからダウンロードできます。

平成25年度 事例Ⅰ 第1問
A 社は、ここ数年で急速に事業を拡大させている。以下の設問に答えよ。
(設問1)A 社のこれまでの成長を支えた、健康食品の通信販売事業を長期的に継続させていくために必要な施策として、新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外に、どのような点に留意して事業を組み立てていくことが必要であるか。80字以内で答えよ。

これは「ふぞろい」では【むずかしすぎる】に分類されていた問題です。正直、私も初見では「何だこれ?」と思いました。何でも自由に書いていいならともかく、この設問に対して「得点が狙える解答」って何を書けば良いのでしょうか?

まずは設問の条件を整理
なにより「新商品の企画や新規顧客を開拓していくこと以外で解答するのが絶対条件。となれば既存商品による、既存顧客からの受注増加を考えるしか無さそうですが、これは事例Ⅰの問題なのであくまで広告ではなく組織・人事の施策を書かなくてはなりません。

なので「じゃあ、既存顧客に対するDMやメルマガをやればいいんだ!」というマーケティング寄りの解答はダメ。ここでは既存顧客の満足度を高める、リピート受注を増やす、といったことにつながる組織・人事の施策としてまとめなければなりません。

先ほど事例Ⅰでは「何を問われているか分からない」問題が多いと先に書きました。
この問題においても、何を問われているか分からない つまり、何を答えていいか分からないままの状態では、ただ虚しく試験時間が過ぎていくのを待つばかりです。

ですがこれを「どのフレームワークを当てはめればよいか分からない状態」と、とらえれば全く事情が違います。なぜならフレームワークの数は限られているので、有限の選択肢から1つ1つ潰していくという「作業」を開始することができるからです。

考えているようで考えていない、
ただあせっているだけ

ゴールはまだ見えなくとも、
とりあえず作業は開始できる

この差はとてつもなく大きいと思います。

ということで、有限のフレームワークから、そこにあるはずの解答を絞り出す作業をここから始めてみたいと思います。
名付けて『どのフレームワークを使っていいか分からないときは、とりあえず全部当てはめてみよう作戦』(以下、略して「全はめ作戦」)スタートです。
なおネーミングセンスの欠如と、このブログに読む価値があるかどうかには直接の相関性は無いので、ブラウザウインドウを閉じてしまうのはもうちょっと待ってください。

各フレームワークの視点に沿って考える、解答要素っぽいこと
やってみるにあたって、最初のうちは時間制限は設ける必要はありません。また、すでにこの過去問の模範解答(または解答例)を見たことがある方は、その解答に寄せようという気持ちはいったんすっぱりと切り捨ててください。

気軽にブレーンストーミングをやるくらいの感じで、各フレームワークの視点から何が言えるかを考えてみましょう。

◇SWOT(特に強みに関すること)
・広告ノウハウの継承・強化
・外注と非正規社員の活用
・オペレーターの離職率が低い、働きやすい環境

◇3C(特に競合との関係性)
・A社は大手ではない
・だから骨・関節サポートサプリメントに特化した
・大手は新市場開拓に熱心。いずれ骨・関節分野で顧客の奪い合いになるかも

◇さ(採用・配置)
A社長は正社員を大幅増やすことはやらなそう。
しかし広告や顧客データ管理、顧客満足度アップ等のノウハウを持つ中途社員を少数採用するのはありなのでは

◇ち(賃金)
リピート受注が多い、顧客満足度の高い、といった優秀なオペレーターの給与を、実績に応じてアップすれば士気向上につながるのでは

◇の(能力開発)
前記のような優秀なオペレーターの接客ノウハウを社内教育に活用すれば、全社的に売上向上できるのでは
A社長や幹部スタッフの広告ノウハウを若い正社員に伝える必要もありそう
クレーム対応の方法も全社で共有した方が良いのでは

◇ひ(評価)
前記のような優秀なオペレーターが正当な評価を受けられるような評価制度を作る

◇も(モチベーション)
前記の賃金、評価の施策を行えばモチベーションは上がるはず
優秀な社員を表彰する

◇け(権限移譲)
優秀な中途社員や、育成した新卒採用社員に権限を与える

◇ぶ(部門)
顧客管理部門を作り、顧客データベース開発・管理も内製化する

◇かい(階層)
これだけは特に思いつくことなし

◇ね(ネットワーク)
外注との関係を強化(サービスが低下しないようしっかり監督する、など)

◇こ(コミュニケーション)
社長の想いを社員に定期的に伝える
お客様の喜びの声を全社員に伝え、自社製品が顧客に役立っていることを共有する

こんな感じで、こじつけでも無理やりでも何でもいいのでフレームワークを片っ端から当てはめて、各視点から言えることを絞り出します。その上で優先順位が高そうなものを選べば自然と解答(になりそうなもの)が見えてくるはずです。

上記の中から、この問題での妥当な解答要素となりそうな組み合わせを考えると、採用・能力開発・外注強化によって顧客満足を高め、それによってリピート受注を増やす のような解答が考えられますが、他の要素の組み合わせでも全然アリだと思います。

ということで解答例です。80字以内なので書けることは限られます。

A社は①優秀なオペレーターの接客ノウハウを社内教育で共有、②中途採用により顧客管理や広告のノウハウを強化、等による既存顧客の満足度向上、関係性強化に留意する。(79字)

平成25年度が掲載されている「ふぞろい」をお持ちの方は参照して頂くと分かりますが、掲載されている解答例には上記の採用コミュニケーションに関する解答要素は含まれていません。(上の解答例ではあえて中途採用を入れてみました)私ごときが言っても説得力があまり無いかもしれませんが、「ふぞろい」に載っているのはあくまで解答の可能性の一部であり全てではない、ということがこの作業をやってみると実感できるはずです。


「全はめ作戦」の使い方

普段の勉強で
まずは3~5年分の事例Ⅰの各設問で関連しそうなフレームワークを片っ端から当てはめてみてください。なぜ事例Ⅰかと言えば前述の通り設問の抽象度が高い分、逆に良い練習になるからです。やってみるにあたって書き留める必要は無いので、電車で移動中とかに「この設問に採用・配置の視点をあてはめると何が言えるだろう」のようにやってみましょう。

慣れてくるに従い、毎回毎回全てのフレームワークを当てはめなくても有効なフレームワークがどれか、ある程度見えてくるようになると思います。そこからさらに「試験時間内にどう解答をまとめるか」という課題にトライしなくてはならない訳ですが、フレームワークの使い方が確立していないのに時間管理のことを考えても意味がない(合格ラインに届くことはない)ので、ここはあせらず着実に進めていくことが大切です。

試験本番で
全ての設問でこれをやっていると時間が足らなくなるので、主に活用すべき局面は2つ。

①過去問に類型が無い問題など、
 難問への対応
②特に最後の助言問題で、
 主要な論点を網羅できているかチェック

こんな感じかと思います。


特に多年度受験生の方へ
過去問演習が一通り終わっている方が多いと思います。ただ模範解答を覚えて「やったつもり」になっていないか、自らを疑ってみましょう。(私がそうだったので)

過去問を元に「こう聞かれたら、こう答えるのがセオリー」といった知識ばかりを増やしていっても、それだけでは過去に類型が無い問題を出されると対応ができません。毎年試験本番では、何がしかの新しい要素を加えた出題がされるので、知識頼りの2次対策ばかりでは毎年「今年は出題傾向が変わった」と肩を落として受験会場から去ることになります。

「全はめ作戦」を試してみると、これまでの過去問演習では気が付かなかった「もしかして、これも解答に使えるんじゃね?」という解答要素がぽろぽろ出てきます。解答要素は記憶の中にある類型問題の解答例を思い出すだけでなく、フレームワークから絞り出すものだ、ということが実感できると思います。

実践編:事例Ⅱ 平成27年度 第2問/第3問(設問2)

さて、今度は事例Ⅱです。事例Ⅱと言えば「ダナドコ」フレームワークですが、ここで格言を一つ。

「ダナドコ」はあくまで「ダナドコ」であり、「ナダコド」でも「ドコダナ」でもない

お前はいったい何を言ってんだと思われるかもしれませんが、我ながらとても良い(深い)ことを言っているつもりです。つまり、事例Ⅱの設問解答において真っ先に考えてないといけないのは常に「誰に?」、イコール、ターゲット顧客の把握です。もし貴方に受験生仲間がいて、その人が「ダナドコ」のことを「ドコダナ」とか間違って覚えていたら、たとえ一時的に気まずくなったとしても訂正してあげるのが真の友情というものです。

余談はおいといて、今からこれを平成27年の事例Ⅱの助言問題を題材にして解説します。
事例Ⅱでは小売やサービス業が事例企業になることが多いですが、ここでの主役は何と商店街です。商店街が事例企業(のようなもの)となったのは、過去問が確認できる平成19年以降ではこの年だけ。
私も初見の際には「なんだこれ?」と思いました。

これを試験本番で解く羽目になった当時の受験生の方々も面食らったとは思いますが、しかし冷静に眺めてみると事例Ⅱとしてしっかり考えられた問題になっていると思います。(理由は後述)

与えられた主な情報としては、
◇商店街は飲食業の割合が多い
◇競合として総合スーパーが進出している
◇商店街は総合スーパーに価格競争で勝てない
◇近隣に新しくできた高価格帯のマンションに子育て世帯の入居が増えている
などです。

ターゲットは誰?どんなニーズを持ってる?

平成27年度 事例Ⅱ 第2問
物産市当日における非食品小売店の売上向上を実現するためには、非食品小売店の店主達へどのような助言をすべきか。B 商店街の主な非食品小売店である家具店、食器店、スポーツ用品店の中からひとつの業種店を対象に選択し、
a 欄の該当する業種店の番号に○印を付けるとともに、b 欄に助言内容を 100 字以内で述べよ。

ここで「全はめ作戦」を再び行っても良いのですが、前述の通り事例Ⅱなので「誰に?」をしっかり確認することを優先させます。この設問がどの顧客層をターゲットとして想定してるのか、分かりやすくするために少し(?)だけ設問文を補足してみます。

平成27年度 事例Ⅱ 第2問・
物産市当日における非食品小売店の売上向上を実現するためには、非食品小売店の店主達へどのような助言をすべきか。B 商店街の主な非食品小売店である家具店、食器店、スポーツ用品店の中からひとつの業種店を対象に選択し、
a 欄の該当する業種店の番号に○印を付けるとともに、b 欄に助言内容を 100 字以内で述べよ。
とか言ってますけど、この1つ前の問題(第1問)で商店街が今後ターゲットとすべき顧客を問うてるから皆分かってるよね?高価格帯のマンションの住民をメインターゲットにするんだよ?彼らは値段が安いものより、高くて良質なこだわりの商品を求めてるんだよ。だからこそこだわりの食品を扱う物産展にわざわざ来てくれてるんだよ?だったら食品以外でも安物よりこだわりの品を売った方が良いし、それには商品のこだわりを伝える努力すなわちコミュニケーションが大事だよ。ねぇ本当に分かってる?

だいぶウザい、しかし親切な設問となりました。

この設問の恐るべき点は「家具店、食器店、スポーツ用品店の中からひとつの業種店を対象に選択し」と問うているのにもかかわらず、どの店を選ぶか、そのお店に合わせた助言は何か、といったことは、解答する上ではたいして重要ではないことです。

なぜなら、どの店を選んだところでターゲット顧客は同じなので、

◇当日向けにこだわりの商品を用意する
◇POPや対面販売による商品説明の強化
◇アフターサービスなど付加価値の訴求
◇店頭のディスプレイ強化
◇通行客への声掛けなどコミュニケーション

こんな感じで、どのお店に対しても使える助言内容だけで解答要素がだいたい揃ってしまいます。

今回、試しにどのお店を選んでも通用する解答を作ってみました。このままでも良いはずですが、なんだったら赤字にした商品の箇所を食器、家具、スポーツ用品のいずれかに差し替えてやればいいだけです。

助言内容は、①当日向けにこだわりの商品を用意、②店頭ディスプレイや店内POPの充実、人的販売の強化、③通行客へのコミュニケーションを積極的に行う、等により物産市来場者から新規顧客を獲得する。(このままだと95文字)

思うに、ここでわざわざ複数の店が挙げてあるのは、ターゲット顧客の特性・ニーズから受験生の意識をそらすという、一種の目くらまし効果を狙ったものではないでしょうか。

だとすれば、なかなか凶悪なトラップだと思う反面、「マーケティングの問題なんだから、雑多な情報に惑わされることなく、顧客ファーストで考えるのが当たり前でしょ?」と言われればまさにその通りなので、ある意味では正しくマーケティングの問題だと言えます。


↑顧客とのコミュニケーション is とても大事
なお接客や商品説明の充実を解答に書く際は「人的販売の強化」のようにすれば、少ない文字数で包括的に表現できます。


では、次の問題です。

平成27年度 事例Ⅱ 第3問(設問2)
代表理事は、設問1で解答した食品小売店が長期にわたり商店街に定着するための誘致と連動した新規イベントを実施したいと考えている。どのような新規イベントを実施すべきか。期待される効果と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。

この設問の前に(設問1)でどのような食品小売店を誘致すべきかを問われています。
食品小売でもターゲット顧客はやっぱり高価格帯のマンション住民だとすれば、誘致すべきなのはやはり、高品質・安全などこだわりの食品を取り扱うお店、というのが妥当な解答と考えて良さそうです。

その前提で、またも設問を補足してみると…

平成27年度 事例Ⅱ 第3問(設問2)
代表理事は、設問1で解答した食品小売店がせっかく誘致により来てもらったんだから長期にわたり商店街にずっと定着するための誘致と連動した新規イベントを実施したいと考えている。どのような新規イベントを実施すべきか。期待される効果と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。
とか言ってますけど、これも高価格帯のマンションの住民をメインターゲットにするんだよ?彼らは…(以下、略)

食品小売店が商店街に定着するきっかけとするために、マンション住民が商店街にやって来て食品小売店の常連客となるような企画にしたい、つまりイベント当日だけ盛り上がるのではダメ。

ということで、一過性のおもしろイベントではなく、こだわりの食材を求めるという顧客ニーズにちゃんと合致させなければならないので、食べ歩きスタンプラリー、試食、マルシェ、調理教室など方向性はある程度定まってきます。

イベントについて解答せよ、と聞かれるとアイデア次第で無限に解答があるように思えるかもしれませんが、きちんと考えると解答のストライクゾーンは意外と狭いということに気づけるかどうかが、この問題の勝負どころです。

ということで、ビンゴ大会、脱出ゲーム、のど自慢大会などは、個人的にいくら面白そうだと思っても、あるいは実際にやったら集客につながる可能性はあっても、顧客ニーズに寄り添っていないので試験解答としては不可! です。

あと、重要な点として事例企業が事例Ⅰ・Ⅲよりも小規模な場合が多く、その分だけ経営資源が限られています。施策を問われた場合は持てる経営資源の範囲内で出来ることなのかの検討も必要です。


↑ 顧客ニーズを見失い、迷走する商店街の面々。


あらためてまとめ 事例Ⅰと事例Ⅱ フレームワークの考え方の違い
事例ⅠでA社の今後の成長戦略について問われ、「採用・配置」「能力開発」の視点からは解答を書いたけれど「評価」については書き忘れてしまったとしても、おそらく書いた分についてはそれなりの部分点がもらえるはずです。これは「さちのひもけぶかいねこ」のそれぞれの要素は並立、というか独立していて、互いの優先順位とかは無いからです。

しかし事例Ⅱでは、誰に→何を→どのように→効果は? という1つのストーリーのようにフレームワークが展開していくため、起点となる「誰」を間違えてしまうとそれ以降の解答が完全崩壊してしまう可能性が高いです。さらに、与件文・設問文の情報量が事例Ⅰより多く。たくさんの情報に惑わされてしまいやすいことも注意点です。

たからこそ、設問文中に「〇〇の顧客をターゲットにして」と書いてある場合はもちろん、書いてない場合も常に(←ここ重要!「対象は誰?どんなニーズを持ってる?」を意識してください。むしろ設問文中でターゲット顧客のことを触れていないときの方が、より強くターゲットは誰かを意識しないとダメです。

もちろん事例企業の強み(SWOT)や市場環境(3C)を意識することも重要ですが、何よりも「誰?」を見失わないようにすれば、解答を思いっきり大きく外してしまう危険性をかなり減らせるはずです。

実践編:事例Ⅲその1 令和4年度 第3問

ついに事例Ⅲまでやってきました。

事例Ⅲでは与件文・設問文の抽象度は低いが情報量が多い、という意味では事例Ⅱと共通しています。違いは、事例Ⅱでは「ターゲット顧客は誰?」の視点で読み解くのが大切なのに対し、事例Ⅲは「問題が起こっているのはどこ?」の視点が重要という点です。そしてそこから「この問題点はどのフレームワークの中で考えるべき?」と俯瞰することができるかが合否を分けるポイントです。

ということで過去問です。

令和4年度 事例Ⅲ 第3問
C 社の販売先である業務用食器・什器卸売企業からの発注ロットサイズが減少している。また、検討しているホームセンター X 社の新規取引でも、 1 回の発注ロットサイズはさらに小ロットになる。このような顧客企業の発注方法の変化に対応すべきC 社の生産面の対応策を 120 字以内で述べよ。

これは典型的な事例Ⅲの「ロット問題」です。
生産ロット、在庫の増加、段取の見直しなどを関連付けて解答させる設問は、事例Ⅲのド定番と言ってもよいので必ずマスターしておきましょう。

さて、設問のような現象がなぜ起こるかと言えば、

取引先の思惑
市場環境の変化などにより、余分な在庫を抱えたなくないので必要な分だけ発注したい(=発注の小ロット化)
例:これまでは3か月分として100個まとめて発注してきたが、今度からは売れた分の補充として10個単位で注文してくるようになった。

これに対して、
C社の生産現場の思惑
効率よく生産するために、なるべくまとめてたくさん作りたい。
理由:C社は中小企業なので製品ごとに専用の生産ラインを持っているわけではなく、大体の場合において1つの生産ラインで複数の製品を作っている。そうすると製品Aを作って後で製品Bの生産に取り掛かるとき、投入材料の変更や生産機械の設定変更など「段取替え」が必要になる。生産現場の人たちからすると、製品Aをドカンとまとめて作ってから製品Bに取り掛かった方が、製品A→B→A→B…とこまめに作るよりも段取替えの回数が少なくて済むので効率的。

—————————————-
注:生産現場だけの都合としてはそうですが、受注量よりも多く生産してしまえば当然余った分は在庫化していきます。そして過剰在庫は限られたC社の生産スペースを圧迫して作業の非効率化につながるだけでなく、事例Ⅳの視点から考えれば運転資金の増加、つまりキャッシュフローの悪化を招きます。

さて上記事例のC社は発注の小ロット化に対応しなければなりません。与件文を読むとC社の製品には「プレス加工製品」「板金加工製品」がありますが、ここでは「プレス加工製品」が問題になっていることが分かりますので、「プレス加工製品」の生産過程を分解してみます。

↑MindMeisterというマインドマップツールを使って頑張って作りましたが、解像度の関係で見づらいかもしれません。拡大してご確認ください。


与件文によると、プレス加工製品の製造には
◇金型の制作工程
◇金型完成後の生産工程

以上2つに大きく分かれます。

金型製作工程にも後継者育成などの課題はあるものの、この設問で問われている小ロット化にはいったん関係ありません。ですので、この設問で考えるべき「どこ」は金型が完成して生産が始まってからのことであり、ここから外れないことが解答条件です。

ということで金型完成後の工程、つまり下の方のマインドマップに注目すると、
生産計画上の課題(マップ中で黄色)
担当者の作業効率の課題(同緑)
2つがあることが分かります。

で、ここでそれっ!とばかりに生産計画をちゃんとすること担当者の作業効率を改善すること、だけで解答欄を埋め尽くすとあまり得点は伸びないと思われます。ここで俯瞰して物事を見るために、フレームワークが有効です。

ということで、


もう一つ、



与えられた情報とフレームワークを組み合わせて、
①生産管理の視点
②生産効率向上の視点
により、解答を組み立ててみると

対応策は①全工程に対応した生産計画を受注量に基づいて立案、週次で更新する、②社内教育により多能工化を推進、段取作業を複数人で行うなど見直しを図る、③その上で受注量に応じた生産ロットサイズ設定等により、生産管理の精緻化と在庫の適正化を図る。(119字)

こんな感じになりました。「生産管理」は生産計画や進捗管理などを含んだ概念であることを忘れないようにしてください。

「ロット問題」にも色々ありますが、この設問に関してはネットで出回っている複数の解答例を比較しても大きな差が無いはずです。それは、生産管理生産効率のフレームワークに含まれる要素を想起できていれば、文章のまとめ方に個性こそあれ自然と同じような解答に収束していくからです。
もちろん試験本番で抜け漏れが無い解答を書けるかどうかは、日頃の反復練習にかかってきます。

ちょっとだけ上級編:生産管理と生産効率の切り分けについて個人的見解
私が受験生時代に疑問に思ったことで、かつ合格してしまったために未解決のまま放置となっていることがあります。

過去問を解説したブログなどを見ていくと、
生産管理のあり方を問われている設問で生産効率について解答すべきでない」のような解説を読んだことがあります。(どこで読んだかは忘れました)

ですが、

平成28年度 事例Ⅲ 第2問
現在C社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を 160 字以内で述べよ。

事例企業C社はカット野菜工場です。C社は製品の歩留まりが悪かったり、作業マニュアルが整備されていなかったりで、どう考えても生産効率について触れないのは不自然です。さらに解答の文字制限が160字以内でとなっているので、無理やり生産管理のことだけで解答を引き延ばすよりも生産効率向上についての解答要素を入れた方が加点される可能性が高いと思われます。

また、この設問には関係ないですが、C社で作業が標準化されていないことにより作業の所要時間が作業者によってバラバラなので生産計画がちゃんと立てられないといった場合であれば、生産管理をしっかりやるためには生産効率について考えざるを得ない、ということも考えられます。

ということで、「生産管理面で」と問われている以上、生産管理フレームをメインに使って解答するのは当然であるものの、設問の内容および文字数制限によっては生産効率の視点からの解答要素を盛り込んでも良いのでは、と考えています。

実践編:事例Ⅲその2 令和4年度 第4問

実践編もこれが最後、事例企業でIT化を推進する問題です。

第4問
C 社社長は、ホームセンター X 社との新規取引を契機として、生産業務の情報の交換と共有についてデジタル化を進め、生産業務のスピードアップを図りたいと考えている。C 社で優先すべきデジタル化の内容と、そのための社内活動はどのように進めるべきか、120 字以内で述べよ。

今回のブログのはじめに、「自分の経験・知識に引っ張られた解答を防ぐ」ためにフレームワークを使うのだと書きました。その典型例がIT化をどう進めるのかを問うタイプの設問だと思います。

なお、この設問ではデジタル化という表現が使われていますが、ここではこの類の問いをIT化の問題として一括りにすることにします。

IT化の問題でやってはいけないことは単純明快です。
それは解答欄を貴方のIT知識自慢で埋め尽くしてはいけない、ということです。

具体的には、
〇〇のクラウドサービスのSaaS機能を使って製造業における次世代DXソリューションを実現し… 的なことを書きだすと100~200字の解答欄はすぐに埋まってしまいますし、凄いことを書いた割りに点数はもらえません。

実際の試験でここまで書いてしまう人はいないと思いますが、2次試験のIT化問題では、何を導入するかではなく、どのような「あるべき姿」を目指していくか、に力点を置いて解答するのがキモです。


こんな感じで、現在の業務をIT化によってどう変えていくかが解答のメインであるべきで、何を導入するかは手段に過ぎない、とも言えます。

ということで解答例です。
C社がやるべきことは、画期的なDXソリューションで次世代に向けて新しい扉を開くとかではなく…

内容は、紙ベースでの社内やりとりを廃止、社内データベース構築により生産管理に関する情報を全社的に一元管理、リアルタイムの共有を図る。社内活動は現在社内にある情報の保存方法などに統一ルールを作り、社内教育により全社員に徹底の上で運用する。(118字)


とはいえ具体的に書いた方が良いこともある
与件文・設問文の内容により、何を導入するかを書くことが加点につながる場合もあります。

◇C社で2次元CADが使われている(令和2年度 第2問)
わざわざ「2次元」と書いてある以上「3次元CADを新たに導入」と書いた方が加点されるはずです。

◇C社の新工場のあり方(令和元年 第3問)
これはIT化の問題ではありませんが、与件文に「(X社からの受託生産にあたって)マシニングセンタなどの工作機械が必要となると書いてあるので、新工場にもマシニングセンタを導入しておくべきでしょう。マシニングセンタには自動で工具を交換する機能がありますので、段取作業の短縮(あるいは外段取化)と密接な関係があります。


事例ⅢにおいてIT化は頻出論点です。
IT知識に自信がある方は、ついうっかり試験本番中に「新しい扉」を開いてしまって墓穴を掘ることがないように、お気を付けください。

おまけ:「多面的解答」とは何ぞや?

ここで、フレームワークとは切っても切れない関係にある(と私が勝手に思っている)多面的解答についても触れておきます。

2次試験の教材を読むにあたり、受験生が必ず目にするのが「解答は多面的に書け」というアドバイスです。

ここでは

なぜ多面的な解答が必要なのか?

ということを、私なりに掘り下げてみたいと思います。
思うに、その理由は大きく分けて2つ。

理由その1:「数撃ちゃ当たる」的に加点要素を増やすため
これはシンプルな話で、多面的な解答イコール解答要素が多いので、加点されるポイントが増えるということです。たとえ部分点であっても全ての設問で得点できれば足切り回避にもつながりますので、試験対策としては理にかなっています。

しかし、本当にそれだけでしょうか?

中小企業診断士協会の公式サイトでは、2次試験後に問題の趣旨が公開されますが、〇〇〇について助言する能力を問う問題である なとど書いてあるだけで、「多面的に答えよ」という公式アナウンスは私の知る限り無さそうです。

ですが、私としては以下のようなことが言えるのではないかと勝手に考えています。

理由その2:ちゃんとアドバイスができる診断士になるため
例えば貴方が、Aさん(仮名)から部下のモチベーションを上げる方法について相談を受けたとします。
貴方はどう答えますか?

助言の例①

助言の例②

↑実際には会話の流れとかもありますが…


助言①の場合、Aさんは信頼する貴方からの助言を真に受け、「そうか!部下をほめればいいんだ!」と、部下を褒める「だけ」になってしまいます。そして、それによって部下のモチベーションが上がるかと言えば、結果は「?」と言わざるを得ません。(場合によりますが、多分ダメなのではないかと思います)

冷静に考えてみて、

◇アドバイスを受けた側が、
◇アドバイスされた内容が正しいと信じて、
◇言われたことを100%全力でやり切って

それで効果がないとすれば、それは有効なアドバイスではありません。
むしろ「それさえやっていればいいんだ!」という間違った方向に相談者の意識を誘導してしまっているとしたら、それは悪気は無くともミスリードといって差し支えないと思います。

それに対して助言②は、
「この問題をちゃんと解決しようと思ったら、これらを押さえた上で、こういうことに取り組みましょう」ということを本気で(つまり気休めでなく)アドバイスしていると言えます。

ここで改めて「そもそも診断士試験って何のためにあるんだっけ?」ということを考え直してみると…

診断士試験は診断士に必要な能力の有無を見極めるためのもの
 ↓
その能力の一つは経営者にアドバイスできることである
 ↓
アドバイスとは、経営者のためにするものである。
診断士の自己満足の為でないのはもちろん、ミスリードなどもってのほか

 ↓
試験問題の事例企業ではほとんどの場合
・できていないこと
・やるべきこと
等が与件文に複数書かれている。
 ↓
それらをきちんと整理の上で「中小企業診断士」として、経営者にアドバイスするつもりでまとめれば、設問の多くにおいて解答は自然と多面的になるはず。

こっちの考え方の方が、真実というか本質を突いているのではないかと思います。
そもそも、単なる受験対策として毎日勉強していると考えるよりも

ちゃんとしたアドバイスができる診断士に、俺はなるっ!! (ドン!)

…という目的(野望?)のために日々修行していると思った方がモチベーションも上がるというものです。

フレームワークと多面的な解答の関係は?
例えば事例Ⅰの実践編で紹介した「全はめ作戦」により、順番にフレームワークを当てはめて「この視点から言えることは何か」を考えていくと、主要な論点を次々に網羅していくことになるため、そこから作成する解答は自然と多面的になります。

これと対照的なのが、フレームワーク無しに設問の第一印象だけで解答を書いてしまうことで、例を挙げると「よし!この問題は社内教育の強化だ!そうに違いない!」と、社内教育一辺倒の解答を書いてしまうなどです。

こうしてできた解答はアドバイスとしては偏っており、上の助言①の場合のように相談者(=経営者)の役に立たないばかりか経営判断を誤らせてしまう原因となってしまうかもしれません。2次試験の全ての解答には文字数制限があるので何でもかんでも書くわけにはいきませんが、その中でも優先度が高い論点をきっちりカバーできていることが良い解答(=良いアドバイス)の条件と言えるのではないでしょうか。

ということで、ここまで長々と書いてきましたが
フレームワークを使うことにより
・自己の知識・経験に引っ張られることなく、
・診断士としての知識体系に基づき、
・アドバイスとして必要な論点を押さえた、

・客観的で多面的な解答が書ける

ということができます。

例えば模試の採点に納得がいかない場合などに、自分が書いた解答は果たしてアドバイスとして成立しているのか、それとも主観に基づいたミスリードでしかないのか、一歩引いた視点で考えてみると気づきがあると思います。

おわりに:まだまだ続く、2次試験突破への道のり

2次試験の勉強開始~合格レベルに達するまでの流れを単純化すると、以下のようになるのではと思います。




今回扱ったフレームワークは上の表でのSTEP2で、ここを乗り越えられるかどうかが2次試験を合格する上での最大のヤマ場だと私は思います。実際、自分の受験生時代を振り返っても、フレームワーク+多面的な解答がつかめてきた時期に模試(MMCを利用)の点数が目に見えて安定、50点を下回ることが無くなってきました。

この長い長いブログを最後まで読んで頂いた皆さんにも是非そこまで辿り着いて頂き、残りのSTEP3と4、つまり解答を時間内にまとめるという言わば「詰め」の段階に早く到達して欲しいと思います。

そこまで来れば、おそらく模試の点数も55点~65点が現実的になってくることでしょう。

それはつまり、
皆さんが今年の2次試験の合格を運任せではなく、
実力で勝ち取りにいけるステージに到達した
ということを意味します。

どうですか?ちょっとワクワクしてきませんか?

50代以上で後がないというあせりを感じている方、

多年度で学習に停滞を感じている方、

50代以上でしかも多年度の方、

それぞれモチベーションの維持が大変かと思いますが、改めてフレームワークを見直した上で過去問に取り組むことで、現状打破のきっかけとして頂ければ幸いです。


なお、ストレート合格を目指す若者については、私は関知いたしません。



それでは皆さんの努力が実を結びますように!




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お楽しみに!

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