【2次試験】事例Ⅰこそ「一貫性」を念頭に by あち

タキプロ17期の あち と申します。
2次試験でよく言われるのが、「2次試験は、試験作成者の経営助言を設問に従って疑似的に追随するもの。そのため、設問間の整合性が重要」という考え方です。
これは全ての事例に共通するものですが、特に事例Ⅰで強く意識していただきたいと思っています。
事例Ⅰは、公式には「組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」とされています。
つまり、組織・人事だけを個別に考えるのではなく、経営戦略を実現するために、どのような組織をつくり、どのように人を動かすのかというつながりで捉えることが重要です。
そのため、設問ごとに個別の知識やフレームワークを当てはめて答案を作ると、設問間で方向性が食い違いやすくなります。
特に学習初期には、「第2問はこの知識、第3問はこの知識」と個別に解いてしまい、あとから答案全体を見ると一貫していない、と感じることもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、答案を書き始める前に「この事例全体として、A社をどの方向へ導くのか」を考え、その方向性に沿って各設問をつなげていく方法をご紹介します。
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目次
■「内部・外部環境→経営戦略→組織戦略→人事戦略」の入れ子構造で整理
事例Ⅰを解く際、私は次の4つの階層で整理すると、設問間のつながりを意識しやすいと考えています。
| 階層 | 考えること |
| 1. 内部・外部環境 | 強み・弱み、機会・脅威などを整理し、今後の方向性を考える土台をつくる。 |
| 2. 経営戦略 | 環境分析を踏まえ、「誰に・どのような価値を・どのように提供するか」という方向性を定める。 |
| 3. 組織戦略 | 経営戦略を実行するために、どのような組織構造・組織文化が必要かを考える。 |
| 4. 人事戦略 | 組織が機能するよう、能力・モラールの観点から採用・配置・育成・評価・権限委譲などの施策を考える。 |
ここで大切なのは、設問が必ずこの順番で並んでいるわけではないということです。
設問文を読みながら、「これは4つの階層のどこを問われているのか」を自分で見極めます(精度向上は訓練あるのみです)。
また、事例Ⅰは「組織・人事」の事例だから内部・外部環境や経営戦略を考えなくてよい、ということではありません。
むしろ、それらと組織・人事を切り離さず、「環境に適した経営戦略を実現するための組織・人事」として一連の流れで捉えることがポイントです。
■最初に「事例全体の方向性」を仮置きする
私がおすすめするのは、まず与件文の冒頭と末尾の段落を読み、会社の概要や現在の課題、今後の方向性をざっくり把握したのち、設問文を読み、各設問がどの階層に該当するのかを仮置きする方法です。
一読したのみでは判断できない設問があっても問題ありません。
すべての設問を一度見てから全体のバランスを考えると、「この設問は経営戦略を聞いている。となるとこっちはその戦略を実現するための組織・人事を聞いている」と見えてくることがあります。
その後、与件文を丁寧に読み込み、各設問の方向性に合う根拠を拾いながら答案を組み立てます。
令和4年度の事例Ⅰを例に挙げ、具体的に整理してみました。
設問ごとにおける階層の仮置き
令和4年度では、第1問で内部環境分析、第2問で人材の採用・定着、第3問で大手中食業者との取引関係、第4問で組織構造と権限委譲・人員配置が問われました。
設問を4つの階層に当てはめると、次のように整理できると思います。
| 設問 | 問われている内容 | 階層 |
| 第1問 | 強み・弱み | 環境分析(内部環境) |
| 第2問 | 新規就農者の獲得・定着施策 | 人事戦略 |
| 第3問 | 大手中食業者との取引関係 | 経営戦略 |
| 第4問・設問1 | 今後の組織構造 | 組織戦略 |
| 第4問・設問2 | 権限委譲・人員配置 | 人事戦略 |
階層を仮置きした後に、各設問の方向性を決める
第3問:経営戦略の方向性を決める
環境分析では、高品質な農作物を強みとし、食の安全志向が高まっているという機会があるものの、大手昼食業者に売上が依存していたり新品種開発が滞っていたりする課題があると分析できます。
これを前提とし、高品質な新品種開発による新規顧客獲得で依存を脱却する方向性とします。
第4問の設問1:経営戦略を実現するための組織戦略を考える
設問文では組織構造のみを聞かれているので、組織文化は考えないこととします。
第3問の新品種開発に加え、農業、食品加工・直営店業も経営戦略にあります。
加えて、食品加工・直営店はここ数年で始めた分野であり、ノウハウが少ないとうかがえます。
一方、A社は人手不足が顕著で、農業と兼業して対応することは困難になってきています。
よって、少ない人数で効率的に事業を行う必要があると考えられ、組織間で機能の重複のある事業別組織よりも、効率的でかつ専門性を持つことでノウハウを蓄積できる機能別組織が望ましいと判断できます。
第2問・第4問の設問2:組織を動かす人事戦略を考える
最後に、第2問と第4問の設問2です。
ここでは、第4問の設問1で考えた組織を実際に動かすための人事施策を考えます。
第2問では、新規就農者を獲得し、定着させるための施策がスポットで問われています。
採用活動だけでなく、役割分担の明確化や教育、地域の農業関係者との関係づくりなどを通じて、仕事への適応やモラール向上につなげるといった方向性が考えられます。
第4問の設問2では、第3問で考えた機能別組織にかなう人事戦略を策定します。
機能別組織はトップが各機能部門を統括する構造になるので、A社後継者をトップに据え、また従業員間の業務の明確な分担もないので、各機能部門の責任者を据えて業務を整理・効率化していく必要があると考えられます。
全体像を一度つなげてみる
ここまでを一つの流れとして整理すると、次のようになります。
| 階層 | 方向性 |
| 1. 環境分析 | A社には高品質な農作物やブランド力の強みがある一方、大手中食業者への依存や人手不足、役割分担の不明確さなどに課題がある。 |
| 2. 経営戦略 | 農業を基盤に強みを活かしつつ、新品種開発などによる差別化を進め、取引先・販路の分散を図る。 |
| 3. 組織戦略 | 複数事業を兼任で運営する状態から、役割分担を明確にし、専門性を高められる組織へ移行する。 |
| 4. 人事戦略 | 新規就農者の採用・定着を進めつつ、後継者には段階的に権限を委譲し、各部門を支える責任者を配置する。 |
もちろん、本番でここまできれいな全体像を作れるとは限りません。
重要なのは、完璧なストーリーを最初から完成させることではなく、「この事例では、A社をどの方向へ導くのか」という仮説を早い段階で持つことです。
その仮説をもとに与件文の根拠を拾い、各設問の答案を作れば、設問ごとにバラバラな助言を書くよりも、全体として一貫した答案になりやすくなります。
■おわりに
限られた80分の中で、事例企業の経営課題を完全に把握するのは簡単ではありません。
だからこそ、設問を個別に解くだけでなく、「この事例全体として、どのような経営助言をするのか」という視点を持つことが重要だと私は考えています。
特に事例Ⅰでは、環境分析、経営戦略、組織戦略、人事戦略を切り離さず、一つの流れとして捉えてみてください。
残りの学習期間では、過去問を解く際に「この設問の正解は何か」だけでなく、「この答案は、他の設問と矛盾していないか」「事例企業を同じ方向へ導いているか」を確認してみてはいかがでしょうか。
設問全体を一つの経営助言として捉える習慣を身につけることで、事例Ⅰの答案作成が少しでも安定することを願っています。
次回は、いくら丼 さんの登場です。
お楽しみに!
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