事例Ⅱの助言問題をダナドコ(だなどこ)&マッチングでぶった斬る! byしばちん

読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ14期のしばちんと申します。

今回は事例Ⅱ、すなわち
「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」
(令和4年の士2次試験案内より抜粋)の第2問以降で受験生を待ち受ける、いわゆる「助言問題」の攻略法についてまとめました。

事例Ⅱで鉄板と言えば皆さんご存じの「ダナドコ」(だなどこ)フレームワークですが、これが何故有効なのかについて理解を深めて頂くことで、試験本番での応用力につながるかと思います。なお「ダナドコ」OR「だなどこ」については、個人的にはカタカナ表記の方が文章として読みやすい気がしたので、そちらで統一します。


それでは読み進めていただく前に
下記リンクをぽちっ!としていただけると嬉しいです。
※タキプロ一同励みになります!

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■プロフィール

◇ハンドルネーム:しばちん
◇年代・性別:50代・男性
◇職種:広告代理店勤務
◇受験歴:1次2回、2次4回
◇得意科目:事例Ⅱ・Ⅲ
◇苦手科目:事例Ⅰ・Ⅳ

上記の通り、私は広告代理店勤務なのでマーケティング系の職種です。
ですが、というかだからこそ、2次試験に取り組み始めた当初は事例Ⅱが一番「アイデア解答」を書いてしまいがちな科目となり、得点につながる解答の書き方をつかむのに時間がかかりました。

今回の記事では、そんな私が実務経験に引っ張られることなく、与件文に沿った解答を書けるようになるために意識したことを中心にまとめてあります。ぜひ合格にお役立てください。

■まずは事例Ⅱの舞台設定から

いきなり助言問題の解説に入る前に、まずは事例Ⅱの舞台となるB社およびB社を取り巻く市場環境を確認してみます。なお、事例Ⅱの与件文は、事例Ⅰ・Ⅲと比べて長い傾向があります。

情報量は多くなりますが、文章は具体的に書かれており、他の事例よりも高い読解力が求められるという訳ではありません。

◇主役となる事例企業(B社)は、
 事例Ⅰ・Ⅲと比べると小規模である。

◇食品関係、サービス業など一般消費者を
 顧客とする業種の場合が多い。

◇B社は競合企業より規模が小さいものの
 製品・サービスに強みを持っている

◇B社長は地域経済貢献など売上以外にも
 事業にかける「想い」を持っている

◇規模の面で価格競争は不利となるので
 自社の強みを生かした、
 差別化(差別化集中)
 高付加価値化がキーポイント

◇大規模な広告・集客施策は無理がある為、
 ターゲット顧客を特定して注力したい
 だから「ターゲット顧客は誰?」が大事

◇外国語が話せる従業員、敷地等、
 未活用の経営資源があることが多い。
 →これをなんとか活かしたい

このような世界観の中で、貴方はB社に中小企業診断士としての助言を考えることになります。
では助言の目的、目指すものは何でしょうか?

■事例Ⅱの真のテーマは「売上最大化」

先ほど書いた通り、事例Ⅱの公式テーマは
「マーケティング・流通」となります。

マーケティングの定義についてはドラッカーなど大先生方が述べられているので、ここでその有難いお言葉を整理してみよう…かと思いましたが、やっぱりやめました。2次試験までの時間は限られていますので、ここは極力シンプルに考えることにしましょう。

最少の文字数で考えるとすると事例Ⅱのテーマは
「売上最大化」
とするのが一番ふさわしいと思います。

↑売上(=お金)はいつだってとても大事


しかし売上が増えれば何でもいいかと言えば、もちろんそんなことはありません。ここで私が自分の経験の上で感じたことを少し書いてみます。

「死ぬ気で売ってる」会社に未来は無い?
私の前職は分譲住宅会社でした。
土地を買い、家を建て、広告により集客を行い、
そして販売するのですが
毎年決算期が迫る度に社長の口から出るのは

「死ぬ気で売ってこい」

「なりふり構わず売ってこい」

といったセリフでした。
(私は営業ではなく広告・広報担当でしたが)

しかし当時も思い、今でも思っていますが、社員が限界を超えて頑張らないと売れないようでは、その企業の行く末はかなり怪しいです。
逆に言えば企業の発展には、市場分析と顧客ニーズを踏まえた組織的な取組が重要で、この「組織的な取組」という視点は事例Ⅰ~Ⅲに共通だと思っています。

そこで「売上最大化」にもう少し言葉を付け加えるとすると

組織的な取組による売上最大化

あるいは「脱!ブラック企業」的なニュアンスを加えてみると

誰かが死ぬほど頑張らなくても売れる仕組み作り

こんな感じになると思います。
(異論がある方は2次試験に受かってからどうぞ)


ちなみに事例Ⅰ・Ⅲの私なりのとらえ方は

事例Ⅰ:
人材が育ち、将来的には社長が何でもかんでも自分で決めなくても済むような組織構築

事例Ⅲ:
作業員や生産管理担当者が過労でぶっ倒れずに済むQCDの仕組み作り

こんな感じです。

■そこで改めて問う。「売上とは何ぞや?」

売上とは、
顧客に商品やサービスを提供した対価である。
以上。

これで終わってしまうと、いったい何のために1次試験の勉強をしたのか、ということになります。

もう少しきちんと考えると…

売上=客単価×客数

さらに要素を分解していくと
客単価:商品またはサービスの単価 ×購入点数
客数新規客の獲得数 + 既存客のリピート回数

により決まってきます。

このため売上増とは、これら数字ををバランス良く伸ばしていくことから生まれます。
ですので、客数や購入点数を伸ばすことばかりに着目して、安易に値下げに走るようなことはNGです。

そこで貴方はB社の視点に立ち、
与件文やグラフ等で与えられた情報の中から、
下記のようなことを考える必要があります。

まずは自社の強み・弱みなどの特徴、
市場環境を分析・把握

自社の商品・サービスを認めてくれる
 (=値引きしなくても買ってくれる)
 ターゲット顧客を市場の中で見定め


ここぞとばかりに
 ・社内の経営資源(未活用のもの含む)
 ・地域の特産物
 ・地元企業との提携
 などを活用、
 差別化戦略
 または差別化集中戦略、
 高付加価値化
を意識しつつ

④-1既存顧客の満足度向上と関係性の強化、
 客単価向上やリピート購買につながるような施策

④-2今まで縁が無かった消費者が
 B社の新規顧客となるような施策

④-3地元への貢献など社長の「想い」
 実現につながるような施策

実際の試験問題で考えると、上記が第1問の分析問題を解くことに、②~④を考えることが第2問以降の助言問題を解くことに、おおよそ相当します。

分析問題も得点源として重要ではありますが、今回は多くの受験生にとって合否の分かれ目となる助言問題に的を絞りたいと思います。

■何故「ダナドコ」は事例Ⅱで鉄板なのか?

さて、事例Ⅱの設定や背景を振り返ったところで、いよいよ「ダナドコ」フレームワークの解説です。

◇ダ 誰に:
 
○○のニーズを持った□□を顧客として

◇ナ 何を:
 既存の製品、
 または
 B社の強みを活かした新製品を

◇ド どうやって:
 チラシなど広告
 SNSによる口コミ拡散
 イベント開催
 といったプロモーションや

 地元企業と提携等の施策により

◇コ 効果:
 新規顧客の獲得
 既存顧客との関係強化
 といった効果を得る
ことで
 売上増につなげる

解答要素をダ→ナ→ド→コの順にまとめることで解答ができてしまうという、超便利なフレームワークであり、先人の知恵といってもおおげさではない気がします。

これが何故、事例Ⅱの解答作成に有効なのか?
その理由をちゃんと理解しているか、それとも盲目的に「事例Ⅱはダナドコ、とにかくダナドコ」と、ひたすら呪文のように繰り返しているだけなのかによって、設問への対応力が変わってくると思います。

先に私なりの結論を書いてしまうと、事例Ⅱの助言問題とは要するに組合せ、言い方を換えるとマッチングということなのだと思います。そしてダナドコの有効性は、組合せなければならない要素を非常に端的に示してくれていることに真価があります。

どういうことかと言うと…


情報量の多い、事例Ⅱ与件文のイメージ

↑まさにカオス。このままでは解答どころではありません。


これを整理して、顧客ごとにマッチングを図ると…

↑どの顧客がどんなニーズを持っていて
そこに何をマッチングするのが良いか定まれば、
B社がやるべきことが見えてきます。

では、組合せを間違えるととどうなるか?

◇食材にこだわる新規顧客層に、
 手軽な惣菜を売ろうとする

◇自宅から近いだけで来店した既存顧客に
 高額なネイル施術をすすめる

これらはミスマッチの例です。
つまりターゲット顧客のニーズに沿った施策になっていないため、売上UPも望めないし、試験解答としても部分点すら怪しいものとなっています。


ミスマッチを起こさないためには?
ダナドコがダ、つまり「誰?」から始まっているのは語感がたまたま良かったからとかではなく、そこから考え始めるのが一番ミスマッチを起こさないために有効だからだと思います。

スタートで間違えると解答全体がダメダメになってしまうので、誰をターゲットとした施策が問われているのか、どのようなニーズに着目して解答を組み立てるのか、常に(本当に常に、しつこいくらいにいつも、always)意識することが大切です。

■実践編:令和3年度 第2問

という訳で実践編です。

令和3年度 第2問
B 社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。ターゲットを明確にした上で、中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

令和3年度 第2問 
B 社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。(省略)中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

上が令和3年度の第2問そのままで、
下()は一部を省略しています。
上下を見比べてみてください。

大切なことは省略された赤字部分、つまり「ターゲットを明確にした上で」という親切な指示が無かったとしても、ターゲット顧客を意識した解答を書くのが事例Ⅱのデフォルトだということで、これはもちろん他のどの問題でも共通です。

まずは、この設問に直接関係する・しないを性急にジャッジするのはやめて、いったんダナドコに関連しそうな主な情報を全て整理してみました。

■設問条件
明示された条件:
ネット販売を通じ地元産大豆の魅力を全国に伝える

暗黙の条件:
B社の存続・発展のために売上を伸ばす

■ターゲット顧客の候補(重複アリ)
・B社顧客リストにある既存客
・京文化への親近感が強いX市の消費者
・地元の主婦層(人口割合に対して少数)
・地元の高齢者
・自宅での食事にこだわりを持つ家庭(増加傾向)
・Y社サイトのお得意さま(全国の食通)

■既存商品
・絹ごし豆腐
・木綿豆腐
・柚子
・豆腐、銀杏豆腐などの季節の変わり豆腐
・手作り豆腐セット

■検討中の商品
豆腐やおからを材料とする菓子

■検討中のサービス
・冷蔵ボックスを置き配

■Bの経営資源
・豆腐の品質、表彰実績
・移動販売のフランチャイズおよび
・元商店経営者や B 社の元社員フランチャイジー
(デモンストレーションができる)
・インスタントメッセンジャー
(ECサイトはまだない)

■競合
・X市内のスーパーマーケットなど量販店
・全国多数の豆腐 ECサイト

■地域の資源・提携候補
・X市の米、水
・新しい素材を使った菓子で人気を博す和菓子店
・予約が取りにくいと評判の割烹
・大手米穀店 Y 社(ECサイトを持ち、X市の米・水・佃煮・干物を販売)

■その他の気になるワード
・B社のこだわりは地元産大豆(国産大豆ではない)
豆腐に旅をさせるな
・収穫祭参加者からの豆腐丼を惜しむ
・高齢層や主婦層からの希望
 人的接触を控えたい、
 自宅を不在にする日にも届けてほしい

ここから解答として有効な組み合わせを作ります。

ダ:誰に?
まずは何よりこれが大事。
ネット販売を前提にしているので地元客が対象ではありません。従って「京文化への親近感が強い」といったX市内の消費性向は関係無さそうです。特に地元の高齢者層はインスタントメッセンジャーを敬遠しているということなので、ネット販売(ECサイト)に対しても親和性が低そうです。

一方で「自宅での食事にこだわりを持つ家庭」が増えていると書かれていますが、全国的に増えているとまでは書かれていません。しかしコロナ禍でのリモートワークの浸透は全国的といっても差し支えない上に、「手作り豆腐セット」を販売するECサイトが既に多数あるということはそういった需要もあると推定できます。このため最も可能性(妥当性)が高い顧客候補と言えます。


ナ:何を?
「手作り豆腐セット」は既に多数のECサイトで販売済み。後発で同じことを行うだけではヒット商品化は厳しいはず。

ではどうやって差別化・高付加価値化を図るか?
・地元大豆をアピール
・豆腐やおからを材料とする菓子
・お菓子と豆腐(または手作り豆腐セット)とのセット販売
それとも…?


ド:どうやって?
B社には独自の通販サイトがありません。サイトを開発し、知名度を上げるための施策(WEB広告など)を行うのは少人数のB社にとっては一大事です。
ということで、ネット販売の選択肢は既にECサイトを持つY社とのコラボしか無さそうです。

そしてY社と連携を考えるのであれば、Y社が顧客として持つ「全国の食通」もターゲットにできるかもしれません。


コ:効果?
目的は「地元産大豆の魅力を全国に伝える」ということで、設問で既に指定されています。「それがB社にとって何をもたらすか?」という点を補足するならシンプルに「売上拡大」となります。


この設問のキーポイントは「何を?」
ということで、この設問ではダナドコのうち「ドコ」はほぼ確定済み。「ダ」も選択肢は限られ、「自宅での食事にこだわりを持つ家庭」が最有力で、文字制限内に収まれば「全国の食通」も加えておきたいところです。

ここまで考えることができれば残りは「何を?」のみとなりますが、想像力を働かせすぎるといわゆる「アイデア解答」または「ポエム解答」となってしまいます。
そこでダナドコを組み立てるためのマスターピースとして、「何を?」のヒントを探します。

豆腐に旅をさせるな
→地元産大豆の魅力を知ってもらうためには出来立ての豆腐を味わってもらうべき

豆腐丼を惜しむ声
→B社の豆腐に慣れ親しんだ得意客からそのような声が上がるほど美味しい

X市は米の産地で良質な軟水もある
→しかも提携先候補であるY社は元々は大手米穀店

この辺に着目できれば、B社が先行する他社ECサイトとの差別化を図りつつ売上拡大を図る一手は「豆腐丼セット」の販売とするのが最も妥当でしょう。

なお、事例Ⅱが行われる時間帯(11:40~13:00)は受験生が最も空腹を感じる時間帯です。令和3年といい、令和4年といい、この時間帯に食べ物に関する出題をするのは試験委員会による受験生への確信犯的な嫌がらせではないかと私は疑っています。

余談はさておき、

解答例:
助言は、自宅での食事にこだわりを持つ家庭や全国の食通をメインターゲットとし、手作り豆腐セットにX市の水、米を加えた豆腐丼セットをY社ECサイトより販売、地元産大豆の魅力を伝えるとともに売上拡大を図る。(99文字)

事例Ⅱに限らず、2次試験では与件文に社長(歴代社長含む)の想い顧客の声などの形を借りて、キーワードがぶっこまれてくることがよくあります。これらキーワードに対してはマーカーで色をつけるなどした上で、解答作成後にちゃんと解答に活かせているかの確認が必要です。


おまけ:解答の切り分け問題
「この情報は設問1で使うはずだから設問2では使えない。だから設問2ではこれを使って…」といった設問間での解答要素をの使い分けを「切り分け」といいます。切り分けが問題となるのは多くの場合、事例ⅡとⅢかと思います。

あくまで個人の意見ですが

事例Ⅱでは各設問において、解答要素の重複がないように区別する。
(異なるターゲット顧客の、異なるニーズに対応する以上、施策や提携先も異なってくるのが自然だから)

事例Ⅲでは、ある情報(例:段取の見直し)が設問1でも設問2でも有効な解答要素になりそうであれば、遠慮なく両方に使う。

これが私なりの結論です。(ただし異論はありかと。)

今回の問題では主なターゲット顧客を「自宅での食事にこだわりを持つ家庭」とした為、和菓子店や割烹とのコラボは解答要素としては使いません。普通に考えれば「自宅での食事」は自宅でお菓子を食べることではないし、ネット通販利用者に京都風の食べ物へのニーズがあるとは与件文には書かれていません。

京都で修業した職人による和菓子や料理が人気を得られるのは「京文化への親近感が強い」X市の消費者の嗜好によると思われるため、これらとのコラボは

第4問
B 社では X 市周辺の主婦層の顧客獲得をめざし、豆腐やおからを材料とする菓子類の新規開発、移動販売を検討している。製品戦略とコミュニケーション戦略について、中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

こちらの問題で使うと考えるべきでしょう。
ということで、

解答例
施策は、京文化への親近感が強い消費者ニーズに沿って豆腐やおからを材料とした京都風の菓子を和菓子店と共同開発、IMによる情報発信や試供品配布により、X市周辺の主婦層からの認知を拡大し、売上向上につなげる。(100文字)

冷静に考えさえすれば、令和3年の第2問・第4問との切り分けはそれほど難しくはありません。が、問題は試験本番に落ち着いて考えられるかです。

そこで「ダナドコ」を使うことで、
・考えなければならない内容を限定
・解答を作る流れ、解答の書き方を定型化


これにより時間効率が向上、少しでも気持ちに余裕持って問題に取り組めることがダナドコを始めとしたフレームワークを使う意義なのだと思います。


おまけのおまけ:ダナドコの間をつなぐものは?
念のための確認です。
豆腐やおからを材料とする菓子類を開発するのも、和菓子店とのコラボするのも、X市周辺の主婦層を顧客としたいと思うのも、全てB社の自由です。

ですが、消費者が求めていないものを売ろうとしても苦戦は必至、販売スタッフが苦労するのは目に見えています。つまり仕組みとして成立していない以上、あとは個人の頑張りで何とかしないといけなくなる訳です。(これが「死ぬ気で売れ」状態です)

少し意地悪な言い方をすると、

たまたま地元にお金を持っている優良顧客候補がいても

たまたま地元に特産物や優秀なコラボ相手が存在しても

自社の製品やサービスに自信があっても


それらが顧客のニーズによって結びついていなければ意味がありません。

「自宅での食事にこだわる」「京文化への親近感が強い(=京都風の味付けが好き)」など、ターゲット顧客のニーズとB社が提供しようとしている製品やサービスが一致しているかどうか。形の上で「ダナドコ」に沿った解答を作ったとしても、ニーズのことを忘れていると的外れとなってしまっている可能性があります。

そこで的外れ解答の防止対策として、自分の解答を見直す際に「このお客様って、この施策で喜んでくれるんだっけ?」と考えてみるのも一つの手です。

■補足①:図表がある場合の注意点

助言問題についていくつか補足しておきます。
まずは与件文に加えてグラフや表で情報が与えられるタイプの問題についてです。

この手の問題は何故か令和2年以降は出題されていません。しかし平成25年~令和元年の間は毎年出題されていましたので、試験対策として慣れておくべきです。

図表がある際はココに注意!

◇大前提
設問文中には「図表1を参照して解答せよ」といった親切な指示は無いことがほとんど。つまり図表がある以上は特に言われなくとも解答に反映にしろよ、というのが暗黙の了解になっています。
あせって与件文の情報だけで解答を書いてしまうと、得られたはずの点を大量に失う、いわゆる「大事故」になりかねないので要注意です。

◇グラフ・表 共通
・タイトル(見出し)
・下にある断り書き
 →両方ともしっかり確認すること

◇グラフ
人口動態など時系列での変化を表していることが多いです。
主な注意ポイントは
・縦軸・横軸が何の数値か
・数値が最大・最少となっている箇所
 最大と最少との差(何倍とか)
 大きな変動を示している箇所
 等です。

◇表
客単価、客層に関連した表である場合が多いです。その場合は、改めて「売上=客単価×客数」を意識してチェックしてください。

↑これを読んで分かる通り、
まずはいったい何の図表なのか、大枠をちゃんと確認してね!
という超当たり前のことが肝心です。いきなり細部にとらわれ過ぎないよう注意してください。

■補足②:「顧客」と「顧客」の違い

「顧客」と「顧客層」ではわずか1文字違いですが、取り扱いには注意が必要です。

顧客層という言い方がされる場合、個々の顧客ではなく「属性」というニュアンスが含まれています。1次の知識として学んだセグメント分析の視点(デモグラフィック・ジオグラフィック・サイコグラフィック)を意識しつつ、問われているのが顧客なのか顧客層なのかを読み間違えないことが大切です。

既存顧客と既存顧客層の違い

■既存顧客とは?
そのまんま、実際にB社を利用したことがある人です。
ただし既存顧客の中にも
◇品揃えが気に入って利用している人
◇自宅から近いので使っているだけの人
など色々な属性があったりするので、その全てが重点ターゲットとは限りません。

■既存顧客とは?
既存顧客に、既存顧客と同じ属性の人を加えたカテゴリです。
例えば
◇近隣高額マンションに住む既存顧客
 および
◇既存顧客と同じ近隣高額マンションに住む人
この住民たちはまだB社を利用したことが無くても、ある程度所得に余裕があり高額でも良い製品・サービスを選ぶ層ではないかと想定されるので、既存顧客と同じ施策が有効となる可能性があります。

過去問での顧客と顧客層
令和元年度から2問ピックアップしてみます。

第2問
B 社社長は初回来店時に、予約受け付けや確認のために、インスタント・メッセンジャー(インターネットによるメッセージ交換サービス)のアカウント(ユーザー ID)を顧客に尋ねている。インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できる。
このアカウントを用いて、デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるためには、個別にどのような情報発信を行うべきか。100 字以内で助言せよ。

第3問
B 社社長は 2019 年 11 月以降に顧客数が大幅に減少することを予想し、その分を補うために商店街の他業種との協業を模索している。
(設問 1 )
B 社社長は減少するであろう顧客分を補うため、協業を通じた新規顧客のトライアルが必要であると考えている。どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか。理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

第2問では既存顧客の中かららに絞り込んで「デザイン重視」の属性の人たちに対する施策を問うています。ダナドコの考え方に沿うと、「誰」は設問文にて指定されているので、あとはそのニーズに沿った施策を答えれば良いことになります。

これに対して第3問では、不特定(名前も顔も分からない)な人たちの中から、どのような属性を持った方を新規顧客として、協業により獲得していくべきかを理由とともに問うています。解答では「誰」を特定しつつ、そのニーズに沿った施策を助言しなくてはなりません。

ということで、ターゲット顧客について考える際は、設問文中に「層」の1文字があるかどうかが解答に影響を与える場合がありますので要注意です。

■補足③:具体的な解答 VS 文字数制限

2次試験では事例Ⅱに限らず解答は具体的に書いた方が良いと言われています。
一方で、何でもかんでも具体的に書こうとすると解答枠に収まらなくなりますので、文字数をほどほどに抑えつつ具体的に書くにはどうすれば良いのかという問題が発生します。

仮にB社の直営店の売上強化のための助言をせよ、問われたとして

①従業員の社内教育に行い商品説明力や接客マナーの向上、店の内外で声掛けを行うなど顧客との接点を積極的に作る

②店内POPを充実させるとともにポイントカード導入により購入を促進する

などのように解答を書くと、制限文字数内に解答が収まらなくなります。

そこで上記①②を

①商品説明や接客向上など人的販売の強化

②POPなど店頭プロモーションの強化

こう書けば一項目あたりの文字数を減らせるので、多面的な(解答要素を多く含んだ)解答を作りやすくなります。

ここで重要なのは①②とも単に文字数を減らしたというだけではなく

商品説明や接客向上など人的販売の強化

前半部分:商品説明や接客向上
→具体的な施策

後半部分人的販売の強化 

→抽象的・包括的な補足

このように、前半で施策の具体例を挙げることで、ただの一般論ではなく、ちゃんと与件文を読んでB社の事情に即した施策を考えているんだぜ、ベイビーという姿勢をさりげなくアピールしつつ、

後半で「~などの人的販売の強化」と補足することで、この「人的販売」カテゴリーに含まれる施策をいちいち全部挙げなくとも丸ごとカバーした形になっています。抽象的に書く、というのは別にそれ自体が悪いことではなく、概念として広い範囲をカバーできるというメリットがあります。


こうして具体+抽象を組み合わせることで

これには採点委員の方も思わず加点せざるを得ませんね

という、抜け漏れのない解答を目指すことが可能です。

例えば「ふぞろい」流で加点要素をたくさん入れた解答を作っているつもりなのに模試などで得点が伸びないという方は思いついた施策をひたすら羅列しただけとなっているかもしれません。

「具体+抽象」によりカテゴリーごとに整理された解答を書くことで、抜け漏れを防ぐだけでなく読みやくする効果もありますので、解答の型を作る上で参考にしてみてください。

■補足④:ド・コの代表例は暗記がおすすめ

改めてですが、
ダ:誰に
ナ:何を

この2つの解答要素は毎年問題によって変わりますので、基本的に与件文から引っ張ってくる他はありません。

逆に言えば、ド(どうやって=施策)、コ(効果)の2つはB社の事情が変わっても、ある程度は解答要素をパターン化できそうです。

少なくとも、まっさらな頭で試験本番に臨むよりは、過去問で有効だった解答要素の代表例を覚えておいた方が良いと思います。

ということでまとめてみると…

解答要素になり得る、どうやって(施策)の代表例

①集客・広告
・SNSなどコミュニケーションツール
・ブログ
・ホームページ制作または強化
・メルマガ
・チラシ
・DM
 ↓
規模の小さいB社にとってはTVCMなど大がかりな広告を行うことは現実的ではありません。ですので上記のような比較的低予算でできる集客・広告手段が有効となる場合が多いです。
また、情報がB社 → 顧客の一方通行であるよりも双方向コミュニケーションにつながり、かつクチコミにつながるとなお良いです。

②イベント

・試食会
・工場見学や収穫体験など体験イベント
・道の駅・物産展への出店
 ↓
基本的にB社は製品やサービスは優れているという設定なので、それが顧客に伝わるような機会を作ることを考えてあげましょう。

③販促・価格戦略

・ポイントカード
・試供品
・初回無料または割引
・月額定額制・サブスクリプション
 ↓
値引きが常態化するような施策は高付加価値化と反するので不可と考え、LTV(顧客生涯価値)を高める方向で考えましょう。

④社外との提携
・地域の特産物活用
・地元企業との提携
・ECサイト業者との提携

⑤社内資源の活用
・経営者・従業員の知識・スキルの活用
・未活用の敷地、店内スペース等の活用

⑥インターナルマーケティング

・従業員のアイデアを積極採用
・社内表彰制度、正社員登用
・社員教育
・社員の待遇改善

⑦新商品開発
ここまでの①~⑥の要素に、顧客の声・社長の想いとドッキングして新たな製品・サービスを開発


解答要素になり得る、効果の代表例

①認知度向上、ブランドイメージ向上

②新規顧客が増加

③既存顧客の来店・購買回数の増加

④顧客単価アップ

⑤固定客化、ファン化など顧客関係性強化、愛顧向上

⑥LTVアップ

⑦従業員のモチベーションアップによる接客向上

⑧地域経済の活性化


最終的にこれらはB社の売上増加、事業の存続・発展につながる形となります。

■補足⑤:効果はどこまで書くべきなのか

解答に文字数制限がある中で、効果をどこまで書くべきかというテーマです。だいぶ個人的な意見としての意味合いが強いので、ご了承の上でお読みください。

令和3年度 第2問
B 社社長は社会全体のオンライン化の流れを踏まえ、ネット販売を通じ、地元産大豆の魅力を全国に伝えたいと考えている。そのためには、どの商品を、どのように販売すべきか。ターゲットを明確にした上で、中小企業診断士の立場から 100 字以内で助言せよ。

「実践編」で取り上げた設問を再び持ってきました。

この設問では「地元産大豆の魅力を全国に伝えたい」というB社の意図、というか、狙いたい効果は既に書かれています。つまり所与の条件です。

この場合「地元産大豆の魅力を全国に伝える」は効果として書いてもいいし、文字数制限に収まらなければ書かなくても解答としては成立すると思います。

ちなみに先の実践編では解答例を以下のようにしました。

解答例:
助言は、自宅での食事にこだわりを持つ家庭や全国の食通をメインターゲットとし、手作り豆腐セットにX市の水、米を加えた豆腐丼セットをY社ECサイトより販売、地元産大豆の魅力を伝えるとともに売上拡大を図る。(99文字)

ここで更に「B社の認知向上」という要素を盛り込みたかったとします。ですが、単純に言葉を追加しようとすると文字数オーバーになってしまうので、所与の条件となっている「地元産大豆~」を省略してしまおうか、という考えが脳裏をかすめます。

とは言え「地元産大豆」を完全に省いてしまうのはやはりギャンブルとなる気がしたので、文字数を調整しつつ加えてみました。(赤字部分)

別解:
助言は、自宅での食事にこだわりを持つ家庭や全国の食通を主な対象とし、手作り豆腐セットにX市の水、米を加えた豆腐丼セットをY社ECサイトより販売することでB社・地元産大豆の認知向上とともに売上拡大を図る。(100文字)

ということで、
施策を問う設問でB社の意図(=狙いたい効果)が所与の条件となっている場合は
・盛り込みたい解答要素
・文字数とのバランス

を考慮に入れつつ、あえて省略(調整)することも1点でも多くとる為の作戦となり得るかと思います。

■おわりに

いかがだったでしょうか?

事例Ⅱはマーケティングといいつつ、その実はマッチングの問題なんだと考えるようになってから、私は事例Ⅱに対して苦手意識を感じることが無くなりました。要するにパズルみたいなものですし。

もちろん視点を変えただけで点数が劇的に上がるということはなく、繰り返し問題演習が必要なことは依然変わらないのですが、どうせなら事例Ⅱでやることは決まっているのだから、きっとなんとかなる!と思って試験に挑んだ方がいいに決まっています。

令和5年の2次試験まで残り時間も少なくなってきましたが、今回の記事が皆さんとってのヒントになりましたら幸いです。

それでは皆さんの努力が実を結びますように!



次回はイマニンさんの登場です。
お楽しみに!


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