事例Ⅱの戦略とモデル企業 by かわけん

皆さん、こんにちは。
「人と会社を健康で幸せにする」、体と心と会社の医士(医師+中小企業診断士)のかわけんです。
自分の専門である、医療、労働衛生、メンタルヘルスの分野から皆様に役立つ情報を発信したいと考えています。特に、私と同じような方(高齢、独学、初学者)の助けになれば幸いです。よろしくお願いします。

先週2次試験も終わりましたね。
受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。今は開放感に浸っておられることだと思います。昨年の私もそうでした。しばし休養してゆっくり羽を伸ばしてください。いい結果が出るといいですね
ブログで皆さんが言われていると思いますが、再現答案はしっかりつくっておきましょう。結果がどうであれ絶対に役に立ちます
また今年残念ながら2次試験に進めなかった方は、しっかり今年出た問題を確認しましょう。皆さんがのんびりしておられる今が差別化のチャンスですよ。そして来年は2次試験を受験生の立場で迎えられるようにしましょう。

今回いただいたテーマは事例Ⅱです。
ところで、この時期に2次試験の話を書くのは結構微妙ですね。2次試験を受けられた方は開放感に浸っているだろうし、来年1次試験から受けられる方にとってはまだまだ先の話だろうし、誰が読んでくれるんだろうかとちょっと不安な気持ちにもなります。
ただ、もうタキプロのブログ活動も後半に差し掛かっており、私が勉強の話を書くのは今回の事例Ⅱと次回の経済学の2回だけです。経済は本当に素人(決してマーケティングがプロというわけではありません)なので、私が思う存分かけるのは今回が最後かもしれません。

以上のような状況ではありますが、私が書く2次試験の話の最後を満喫すべく、いつものように長く重いブログを投稿しようと思います。受験直前ではありませんのでダイレクトに役立つような情報ではなく、ちょっと時間のある時に考えたいような内容にしました。

いつものように伝えたい思いの強さから、かなりの長文です。ブログは気軽にサクッと読みたいと思われる方には申し訳ありません。長いのはイヤと言われる方は、「6STP+4P(+口コミ)に何を記載するの表」を持って帰るか、口述試験に役立つ情報「8 2次試験の事例のモデル企業」の話でも読むか、だけでもしていってください。
ところで令和3年度の問題を、ちらっとですが見せていただきました。ネット戦略、製品戦略、コミュニケーション戦略が出たみたいですね。このブログを試験前に読んでいただければよかったのにと思うとちょっと残念に感じています。
ただ、試験は来年以降も続きます。このブログがいつか誰かの役に立つことを願って頑張って書きます。よろしくお願いします。

私は今まで以下のような投稿をしています。興味のある方はご覧ください。
※どれも長いですm(_ _)m
1回目 合格体験記
2回目 令和二年の事例Ⅳ、どうすべきだった? かわけんの経験より分析してみた!
3回目 ITを活用した効率良い勉強方法 by かわけん
4回目 運営管理の勉強で使った副読本 by かわけん
5回目 まだ1次試験に間に合います。気合を入れて最後のラストスパート! by かわけん
6回目 事例1・幸の日も毛深い猫とモチベーション by かわけん
7回目 独学・初学者のための2次試験の解き方 by かわけん
8回目 インターネットから学んだ事例Ⅲのエッセンス
9回目 審査員から皆さんに伝えたいこと by かわけん

■はじめに

私の事例Ⅱは72点とまずまずでした。
しかし第2問でけっこう大きな事故を起こしています。ハーブYについての方向性を聞かれているのに、ハーブXについての方向性を記載してしまいました。翌日、再現答案を作っている時、この事故に気づき真っ青になりました。第2問は配点は30点なので残りは70点満点です。絶対低得点だと思いましたが、開示結果は72点でした。ちょっと不思議なのですが、残りの問題がかなり合っていたのかもしれません。
もともと私自身、マーケティングは全くの素人かつ独学の初学者なので、特別な事は何もしていません。問われていることに対してSTP+4Pで答案を書くようにしただけです。ただ事例Ⅱは設問で名前のついた戦略について問われることが多いので、戦略についてまとめを作成していました。もしかしたらそのまとめが良かったのかもしれないと感じています。
 
ところで、現在、私は京都大学の医療ヘルスケア・イノベーション起業家人材育成プログラム(HiDEP)に参加しています。参加者は医学部や経済学部の大学生や大学院生、留学生、会社員、医師、自営業、MBA保持者など(not MECE)多様な人々です。その中で私は唯一の中小企業診断士です。週に一回オンラインの授業を受けて、メンターの指導を受けながらチームでプロジェクトの完成を目指しています
先日、京都大学の経済学部の教授からマーケティングの講義がありました。その先生がSTP+4Pに関する私の質問に、「STP+4P?、経営のプロたる中小企業診断士がそんな古いこと言ったら困るよ」と返答されました。そこで「それでは他のフレームワークを使うのでしょうか? それとも7Pとかに拡張して使うのでしょうか」と質問したところ、「そこはもっと柔軟に考えないと。現在はビックデータやDXの時代・・・(続く)」と返答されました。「それって適当にやれってこと・・・?中小企業にビックデータやDXって言っても・・・(私の心の声)」と思って質問は終わりました。まだ診断士の新米である私にそんなことを言われても困りますよね。
確かに本当のプロフェッショナルならフレームワークにこだわらず、柔軟にその場で必要な事柄を考えることができると思います。ただいくら中小企業診断士とは言え、我々のような新米はそんな優れた経験や知識はまだ持っていません。やっぱり最初は枠にあてはめていくだけでMECEが実現できる切り口であるフレームワークのSTP+4Pに頼る方がいいと思います。
そこで今日はマーケティングの鉄板フレームワーク、STP+4Pを軸に事例Ⅱの戦略を考えることにします。
 
さて、事例Ⅱは名前のついた戦略を問われることが多いことです。
本来の意味での戦略、それとも戦術?施策?作戦?方策?ということは置いといて、初めて過去問を解き始めた時は「〇〇戦略について述べよ」と言う設問が多いのに戸惑いました。このような設問はいきなり聞かれるとなかなか答えにくいものです。試験中に悩むのは時間の浪費です。そこで反射的に答えられるようにまとめを作成したわけです。

今回のブログは、事例Ⅱで問われている戦略についてお話します。受験生時代にまとめたものを、詳しく調べ、自分で考え、まとめを作成し直しました。受験生のときは全く時間がありませんでしたが、今回は時間をかけて考察しています。
今回使った資料は、『中小企業診断士 最速合格のための スピードテキスト (1) 企業経営理論』、『中小企業診断士2次試験合格者の頭の中にあった全知識』、『30日でマスターできる 中小企業診断士第2次試験 解き方の黄金手順』、『中小企業診断士1次試験一発合格まとめシート』です。それにタキプロのブログなどのネット情報を加え考察しました。今回のブログに記載するまとめは、あくまでも素人のかわけんが受験生時代の知識とネット情報を元に考えた私見です。参考にされる時は十分にご注意ください。
また筆記試験に合格された方には、最後の口述試験が待っています。口述試験の準備には、私は事例のモデル企業を調べた方がいいと思います。そこでモデル企業のことと、私の失敗談についても少しお話しします。

1マーケティングとは

事例Ⅱは中小企業診断士の試験案内に、「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」と記載されています。流通に聞かれることはあまりありませんから、本質はマーケティングと経営戦略のようです。

じゃあ、マーケティングとは何?ということで定義を調べてみました。

マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

アメリカマーケティング協会(AMA, 2007, Approved 2017)

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

日本マーケティング協会(JMA, 1990年)

マーケティングとは、顧客満足を軸に『売れる仕組み』を考える活動

グロ-ビス経営大学院

AMAの定義は時々変更されているようです。最近はステークホルダーが増え、行動もとても多様になっていますから、時代の変遷に合わせての変更がどうしても必要なんでしょう。ただ多くの要素を含むので受験生には正直わかりにくいものになっています。受験生時代は覚えるのに苦労しました。

JMAの定義はステークホルダーも少なく行動もシンプルですね。これは1990年とバブル期のものです。HPからマーケティングの定義作成の経緯を示した書類がダウンロードできるので一読しましたが、1985年に改訂された AMA のマーケティング定義を元に変更したと書かれています。85年の定義を90年に改定したのは素晴らしいと思いますが、さすがにそのまま改訂がないのでちょっと古そうですね。

グロービス経営大学院のものは、「顧客満足を軸に売れる仕組み」と、企業にアドバイスを送る我々中小企業診断士にとってはシンプルでわかりやすいです。これはいつ規定されたかが書かれていませんでした。

試験案内で事例Ⅱは「マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例」とされているので、マーケティングによる売れる仕組みが本質になるとおもいます。そう考えると、広くステークホルダーを考えるAMAの定義より、シンプルなグロービス経営大学院の方が馴染みやすいかもしれません。まずはマーケティングは何かちょっと理解できました。

2事例Ⅱで出題される戦略

事例Ⅱは設問で名前のついた戦略について問われることが多いです。これは事例Ⅰや事例Ⅲと大きく異なる点だと思います。
コミニュケーション戦略と言われると、私のような素人にはとてもかっこよく響き、まさにビジネスの花形に思えます。そう考えると事例Ⅱは経営コンサルタントの中心的な仕事なのかもしれません。
ただ受験生時代は、名前のついた戦略ちょっと手強い宿敵のように感じていました。「しばしば出てくるのに形が変わりつかみにくいもの」みたいな印象です。

2011年まで10年分の過去問で、設問にでてきた名前のついた戦略を調べました。

  • アンゾフのマトリクス(2020)
  • コミュニケーション施策(2020)
  • SNSのアカウントを用いて個別にどのような情報発信(2019)
  • 価格プロモーション以外の提案(2019)
  • インターネット戦略(2018)
  • 製品戦略(2016)
  • プロモーションと販売の戦略(2016)
  • ブランド戦略(2016)
  • インターネット戦略(2016)
  • マーケティング・コミュニケーション(2016)
  • マーケティング戦略(2015)
  • コミュニケーション戦略(2014)
  • プロダクト・ポートフェリオ・マネジメント(2014)
  • オフラインでのコミュニケーション戦略あるいはセールスプロモーション戦略(2013)
  • 製品戦略(2012)
  • コーズリレーテッド・マーケティング(2012)
  • マーケティング・アクション(2012)
  • 競争戦略(2011)
  • 市場浸透戦略(2011)
  • インターナル・マーケティング(2011)

こうやって見るとやっぱり多いです。一方、同時期に事例Ⅰや事例Ⅲでは名前のついた戦略について聞かれている設問はありませんでした。これではわかりにくいので、系列別にまとめ直しました。(これはあくまでのかわけんの分類です。ご了解ください。)

一般的な戦略系
・アンゾフのマトリクス(2020)、市場浸透戦略(2011)
・競争戦略(2011)

マーケティング戦略系
・マーケティング・コミュニケーション(2016)
・マーケティング戦略(2015)
・マーケティング・アクション(2012)

Product戦略系
・製品戦略(2016)(2012)
・ブランド戦略(2016)

Place戦略系
・プロモーションと販売の戦略(2016)

Promotion戦略系
・価格プロモーション以外の提案(2019)
・プロモーションと販売の戦略(2016)
・オフラインでのセールスプロモーション戦略(2013)

コミュニケーション戦略系
・コミュニケーション施策(2020)
・マーケティング・コミュニケーション(2016)
・コミュニケーション戦略(2014)
・オフラインでのコミュニケーション戦略(2013)

インターネット戦略系
・SNSのアカウントを用いて個別にどのような情報発信(2019)
・インターネット戦略(2018)(2016)

特殊系
・コーズリレーテッド・マーケティング(2012)
・インターナル・マーケティング(2011)

これでずいぶんすっきりして、わかりやすくなりました。
一般的な戦略系は、アンゾフのマトリクス、競争戦略(おそらくポーターやコトラー)くらいです。これは他の事例でも必要なものです。
事例Ⅱ特有のもので言えば、マーケティング戦略はSTP+4Pなので、Product、Place、Promotionも含まれます。ちなみに4PのうちPriceは出ていません(制約条件になることはあります)。あとはコミニュケーション戦略とインターネット戦略と特殊系です。インターネット戦略とコミュニケーション戦略は最近頻出されているのに対し、特殊系は最近あまり出ていません。
そうすると、事例Ⅱで憶えるべき戦略は、STP+4PのPrice以外のマーケティング戦略、コミニケーション戦略、インターネット戦略の3つになります。整理前の姿よりずいぶん絞られました。

3コミュニケーション戦略とインターネット戦略

ところで、コミニケーション戦略とは何でしょうか?
いきなり聞かれると知らないフレームワークかと思ってしまいますよね。私も受験生時代にはどう書けばいいのか結構悩みました。今回は時間があるので詳しく調べてみました。
まず私が試験で使った資料には記載がありませんでした。これだけで頻出されているのに、本には載っていないようです。
次にネットで調べてみました。

企業が顧客などのステークホルダーに対して製品やサービスの情報を効率的かつ効果的に伝えるという経営戦略。コミュニケーション戦略は情報発信によって商品やサービスについて知らしめていく活動であり、そのために「広告」「販売促進」「人的販売」「パブリシティ」「口コミ」などといった事柄を的確に組み合わせることで顧客に情報を伝えている。

ウィキペディア

製品やサービスの情報を、ターゲット顧客に効率的かつ効果的に伝えるための戦略。手段は「広告」「販売促進」「人的販売」「パブリシティ」「クチコミ」の5つに大別される。

グロービス経営大学院用語集

どうも、4PのPromotionに「クチコミ」を加え効率的かつ効果的に伝えるだけです。もちろんSTPは入りますし、効率的かつ効果的は言うまでもないことですから、全く目新しいものではありませんでした。受験生時代は結構悩んだのに、拍子抜けでしたね。
もっとネットを探ると、受験支援サイトにはコミュニケーション戦略は「受信・発信・共有」、「双方向」とされているものも認められますが、上記の定義にはなんとなく合いません。確証はありませんが、これは後述のインターネット戦略と混じってしまったような気がします。

ともかくコミニケーション戦略は「STP+Promotion+クチコミ」と特殊なフレームワークではないことがわかりました。
 

次はインターネット戦略です。テキストにはインターネット戦略という具体的な戦略は載っていませんでしたが、インターネット関係のものはたくさん載っていました。製品開発、価格操作、販売、宣伝など4Pに関わる全ての範囲です。

確かにインターネットを使えば、製品開発、価格操作、販売、宣伝すべてできます。もちろん口コミも入ります。それを考えると、インターネット戦略は制約条件がオンラインのマーケティング戦略全般と考えられるものかもしれません。

さてここまで事例Ⅱで出題されている戦略について、考察したことを図にまとめました。

随分わかりにくかった戦略がかなりクリアになりました。
基本のマーケティング戦略を、オンラインに制約すればインターネット戦略、そしてSTP+4Pに口コミを足せばコミュニケーション戦略になります。○○以外の戦略との設問もこれでわかりやすくなりました。受験生時代には名前のある戦略にビビっていたのですが、こうやって見ると、STP+4P+口コミ戦略を使いこなせればすべての設問に対応できることになります。

4STP+4Pの一般戦略への拡張

事例Ⅱで出題されている特有の戦略について検討したところ、STP+4Pに収束することがわかりました。これってもしかしたら、先程サラッと流してしまった一般的な戦略系にも適応されるのではないかというアイディアが浮かんできました。
一般的な戦略系で出題されたのは、アンゾフの成長マトリクスと競争戦略です。競争戦略をポーターとコトラーの戦略と考え、STP+4P(+口コミ)に強引に適応しました。

ちょっと疑問点もありますが、すんなりと入りました。
2次試験は「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例」なので、経営資源が限られています。それを考えると、表中の濃い肌色が取るべき戦略、薄い肌色が可能性のある戦略ということになりました。
さて前述の事例Ⅱの特有の戦略と、この章の一般戦略を合わせると、STP+4P(+口コミ)にすべてが入ってしまいました。ということは、STP+4P(+口コミ)を使いこなせれば、事例Ⅱのすべての戦略に対応できそうです。

5STP+4Pと”だなどこ

ここまでで、STP+4P(+口コミ)が事例Ⅱのすべての戦略の根本であることがわかりました。だけど、2次試験にSTP+4P(+口コミ)に沿って答えを記載する人は少ないと思います。やっぱり事例Ⅱの解答の基本は”だなどこ”です。知らない人はいないと思いますが
”だなどこ”とは、だ:誰に、な:何を、ど:どのように、こ:効果
の省略で、事例Ⅱ特有の万能フレームワークです。フレームワークとは、あてはめるだけでもれなくダブりなく分析ができる着眼や発想ですから、とても便利なものです。もちろん私も使っていました。ですがマーケティング戦略のSTP+4Pとの違いをよく考えないまま曖昧な状態で使っていました。今回は時間がありますので、そのあたりを調べつつ考えてみたいと思います。

STP+4P(+口コミ)とだなどこを図にしました。

今までの図のSTP+4P(+口コミ)に売上、顧客満足、顧客生涯価値が加わりました。”だなどこ”の効果を考えるにはこれは絶対必要だからです。

こうみるとSTPのターゲティングとポジショニングに対応する”だなどこ”がありません。これは”だなどこ”が診断士試験特有のフレームワークだからだと思います。中小企業は経営資源が限られていますから、ターゲティングは前述の基本戦略表から集中に限定されます。なので空白でも構いません。
そしてポジショニングですが、これは難しい。なぜならポジショニングにははっきりしたフレームワークがないからです。ネット情報によれば、重要度の高い2軸の要素でポジショニングマップを作って差別化するとされています。まあ、素人にはよくわからないので無視します。
あとターゲティングは 誰に に、価格戦略は 何を に、口コミはどうやってに半分くらい入るかもしれません。まあそのあたりも曖昧のままにしましょう。

この図を見ると、空白の部分は中小企業特有の集中で埋まるので、事例Ⅱの解答の基本”だなどこ”は見事にマーケティング戦略STP+4P(+口コミ)に適合した上に解答に必須の効果まで含んでいることになります。見事な試験用のフレームワークですね。
ただし”だなどこ”はマーケティング戦略STP+4P(+口コミ)とイコールではなく、中小企業専門のS+4P(+口コミ)+効果を入れたものということになります。

6STP+4P(+口コミ)に何を記載する?

ここまでで、STP+4P(+口コミ)はマーケティングの基本で、効果を追加した”だなどこ”は事例Ⅱ試験の完璧なフレームワークであるとわかりました。STP+4P(+口コミ)+効果で試験対策は万全になりそうです。

じゃあ次はどんな内容を記述するかです。書くべき内容がわからなければ答案を作成できませんので、一覧表にしました。
ターゲティング(Targeting)は中小企業なので集中で決定、ポジショニング(Positioning)はよくわかりません。あとは”だなどこ”が対応している、S+4P(+口コミ)です。ここに書くべき文言を考えます。インターネット戦略を区別するために、4Pはオンラインとオフラインに分けました。また価格戦略(Price)は最近出たことはありませんので白塗りにしました。

こうやって見ると、オンライン戦略は多種多彩です。特に広告が強そうです。また口コミも色々あります。しかもうまくやれば安価で迅速に広範囲に口コミを惹起できます。オンライン戦略が最近頻回に出題されているのはここらに理由があるのかもしれませんね。
設問で問われる戦略を、この一覧表の中から選んで書けば、試験にうまく対応できそうです。

7実在のモデル企業にSTP+4P(+口コミ)と”だなどこ”と当てはめる

さてここまでで、けっこう事例Ⅱのマーケティング戦略に詳しくなりました。じっくり考えてみるものです。次は実在のモデル企業に当てはめます。
個人的なことですが、先日、私は転職で病院を変わりました。そこでは新しく外科として手術を立ち上げてほしいと言われてます。また私は副業として産業医・労働衛生コンサルタント、中小企業診断士、京都大学のビジネススクールで検討しているプロジェクトなど、いろいろな立場があります。
そのどれを検討するにあたっても、「1マーケティングとは」で取り上げた「顧客満足を軸に『売れる仕組み』を考える活動」であるマーケティングを考える必要があります。

それではここまでやったことを、モデル企業、私の立場の一つであるかわけんの副業(産業医・労働衛生コンサルタント)に当てはめ、試験風に答案を作成します(あくまでもフィクションです)。

かわけんは外科医でありながら副業で産業医もしています。産業医はかなりニーズがある仕事ですが日本中に10万人もいます。そこで差別化のため産業医の上級職である労働衛生コンサルタントを取りました。労働衛生コンサルタントは3−4千人で、産業医の3−4%になります。結構レアですね。でもまだまだ差別化には不十分なので、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種、カウンセラー、中小企業診断士、健康経営エキスパートアドバイザー、治療と仕事の両立支援コーディネーターを取得しさらなる差別化を図りました。これでとてもレアな産業医となりました。ただそれだけでは全然売れません。
そこでマーケティングを行うことにしました。

かわけんは人と会社を健康で幸せにしたいと言う理念があり、理念に共感していただけるクライアントと一緒に仕事をしたい思っています。ただ、1人なので経営資源は限られて、しかも使える時間が木曜の午後だけなので、あまりたくさんの仕事をこなすわけにはいきません。行けるのは交通の便のいいJR沿線のみです。業者経由の仕事はピンハネされるので、直販を望んでいます。宣伝にHPも作りました。
この設定で、STP+4Pと”だなどこ”に沿った戦略を図にしました。

経営資源がないので、思ったほどできることはないです。特にプッシュの広告戦略は全くできないです。一方、プルのオンライン戦略ならできそうです。経営資源のない中小企業には、こっちのほうが有用ですね。最近ネット戦略が頻出されているのは、それが理由かもしれません。
しかし、かわけんが売れるには厳しいですね(T_T)。困った、頑張らねば。
まあ、これをいろいろな戦略を表記します。Excelの各セル中の文字の前につけた番号を引用番号としました。

  • STP+4P(マーケティング戦略):1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+13
  • だなどこ :1+2+3+4+7+8+9+10+11+12+13+14+15
  • コミニュケーション戦略 :1+2+3+4+5+6+10+11+12+13+14
  • インターネット戦略 :1+2+3+4+5+6+7on+8on+9on+10on+11on+12on+13on+14on

ちょっと煩雑な一覧になりましたが、こんな感じで考えるといいのでしょう。設問に沿った解答ができました。制限条件があればそれを外せばいいです。
しかし実在のモデル企業の『売れる仕組み』を考えるマーケティングは難しいものですね。

8 2次試験の事例のモデル企業

さて、最後はモデル企業の軽い話題で締めたいと思います。特に口述試験を受けられる方にオススメです。

ご存知な人が多いと思いますが2次試験の事例にはモデル企業が存在することがあります。ネットで調べると事例Ⅰと事例Ⅱは結構出てきます。事例Ⅲはかなり稀です。腐りかけの野菜を出荷していた企業なんか、モデル企業として取り上げにくいからでしょう。

口述試験の前にはモデル企業を探して一旦見ておくと、企業のイメージがリアルに浮かび上がってくるのでとても試験に対応しやすくなります。二次試験に合格された方は、ぜひモデル企業を検索してみてください。ネットで探すと、誰かが情報を提供してくださっていることが多いです。
ここからは私の失敗談です。

昨年の口述試験の前に、私はモデル企業を探しました。そして見つかったのは事例Ⅰと事例Ⅱでした。
事例Ⅰは岐阜県の造り酒屋でした。「日本酒いっぱいある、コンクールで金賞とってる、さるぼぼぬいぐるみ高けー」、と楽しみながらHPを見ていました。口述試験はほぼ合格するので余裕の気分でした。事例Ⅱは与那国島の薬草園でした。「なるほどハーブは長命草か、栽培の秘密は海水ね」と納得しながら記事を見てました。そして、口述試験前には事例Ⅰと事例Ⅱのリアルな企業のイメージが出来上がっていました。

そして口述本番、「事例Ⅰについて聞きます。今後どのようなプロモーションが望ましいですか?」と聞かれました。「事例Ⅰ、ラッキー!」と心の中でガッツポーズしながら、ここが実際にやってたこと「日本酒コンクールで金賞を狙います!」と脈絡を考えず答えました。審査員から「日本酒コンクール・・・???、どういうことですか?」と、首を傾げながら突っ込まれ、ちょっとしどろもどろになってしまいました(笑)。本当に冷や汗をかきましたよ。”だなどこ”を使わず答え、更に与件文からはみ出すのは良くなかったです(笑)。
そして「次は事例Ⅱについて聞きます。・・・」と続きました。また「事例Ⅱ、ラッキー!」心の中でガッツポーズでしたが、さすがに今後は「栽培ノウハウは海水です」とは答えませんでしたよ(笑)。

皆さんはリアルな企業姿を頭の中で描きながらも、私のようなミスをしないように注意してくださいね。

9先人たちのアドバイス

今回のブログを書くにあたって、いろいろタキプロのブログなどの情報を参考にしました。その中から特に役立ったものを列挙します。
かなり同期のものが増えてきました。

SNSは中小企業の救世主?! Byへの
ワンランク上の受験生は、戦略ドメインを描いて、事例Ⅱにおけるプロマーケターになるー! by ないち
☆事例Ⅱ☆解答の型とキーワードを抑えればOK byくぅ
事例Ⅱで「開眼」した時に気づいた3つのポイント その① by ウラマツ
事例Ⅱで「開眼」した時に気づいた3つのポイント その② by ウラマツ
事例Ⅱの解答フレームと切り口/ヒロ

■おわりに

本日はマーケティングのフレームワークの鉄板であるSTP+4Pを軸に事例Ⅱの名前のついた戦略について、自分の考えていることをお話ししました。受験生時代はこれだけゆっくり考える時間がなかったのですが、今は少し余裕があるのでいろいろ調べて考えました。時間があるって本当にいいですね。

こうやって見ると、事例Ⅱの戦略はほぼSTP+4Pに収束させることができます。やはりSTP+4Pはマーケティングのとても重要な基本です。またSTP+4Pを診断士試験の事例Ⅱに特化させた”だなどこ”は、素晴らしい試験向けのフレームワークであることがわかりました。受験生の皆さんも是非フル活用してくださいね。

ただ今回調べて思ったのですが、”だなどこ”の欠点はSTPのTとPに対する関与が弱いことかもしれません。”だなどこ”ではジオ・デモ・サイコで答えますから、TとPが抜けてしまうからでしょう。これは文字制限と時間制限のある試験では仕方ないことですが、実際マーケティングを考えるときにTとPはとても大事な要素です。自分の事例を考えて、そこに気をつける必要があると感じました。

ところで最近、前述の京都大学の医療ヘルスケア・イノベーション起業家人材育成プログラム(HiDEP)の講義に関連して、デザイン思考、リーンスタートアップ、アントレプレナーシップ、イノベーションなどの本を読んでいます。これらの本では製品・サービスからSTP+4Pを考えるのではなく、顧客のニーズから課題を解決する製品・サービスを考えることが重視されています。この考えでは製品・サービスを開発する前にSTPは既に決まっています。
またモデル企業で考えましょう。例えばコーヒー屋さんをしたい人がいて、その人はとても美味しいコーヒーを出せるとします。

  • 製品・サービスからSTP+4Pの考え方
    お店を出したい場所でSWOTをして、STPを決めて出店し、美味しいコーヒーを売るために4Pを行う。診断士のマーケティングはこんな感じでしょうか。
  • 顧客のニーズから製品・サービスの考え方
    駅前で人を観察すると、かなりのサラリーマンが時間つぶしをしていた。雑誌を読む人、スマホをいじる人、缶コーヒーを飲む人がいた。そこで駅前で、雑誌を読んだりWifiでスマホが使えたりする、美味しいコーヒーを出す喫茶店を作って、顧客の時間つぶしというニーズを充足させることにした。こちらは顧客の課題を充足させるサービスを売るために4Pを考える方法ですね(スタバ風のコンセプト)。

両者は、製品が先か、ニーズが先かの違いです。最初に書いたHiDEPで経済学部のマーケティングの教授がおっしゃってたこともそういったことかもしれません。実際、HiDEPで行っている製品開発では、顧客ニーズからイノベーティブなプロダクトを作成する後者の考え方を行ってます。逆に、私が途中であげた私の産業医・労働衛生コンサルタントのマーケティング戦略などはサービスが先に来ていますから、前者の考え方になります。
どちらが正解というものではないでしょう。ただ一方に偏るのではなく柔軟に使いこなす必要があるのではないかと思います。

私は”体と心の会社の医士(医師+中小企業診断士)”として今後頑張るつもりですが、実際、中小企業診断士として経営コンサルタントとして活動するかは分かりません。そもそも体と心の会社の医士には、経営コンサルタントのニーズがないような気がします。
ただ外科医、産業医・労働衛生コンサルタント、HiDEP受講生としてどの立場においても、開発された製品・サービスからSTP+4Pの考え方と顧客ニーズから導かれる製品・サービス開発の考え方のどちらもうまく使いながら、「顧客満足を軸に売れる仕組み」マーケティングの知識を活かしていきたいと考えています。

皆さんも試験に合格して中小企業診断士の資格を取られたら、自分を売りこむためや、企業の売上を上げるためにマーケティングの戦略を考えるときがあるでしょう。その時に今日のブログが少しでも役に立てば嬉しいです。
また冒頭で取り上げたAMAの定義のように、マーケティングは単に売上を上げるだけではなく、「顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセス」でもあります。いろいろな価値をうまく伝えるのにこの知識が活用できるといいですね。

最後に、何度も言って申し訳ありませんが、今回のブログはあくまでも素人のかわけんが受験生時代の知識とネット情報を元に考えた私見です。参考にされる時は十分にご注意ください。
また、もし間違い等ありましたら、お会いした時でもそっと教えてくださいね。飲み会などで、誰かとマーケティングについて話ができるのを楽しみにしています。

もうタキプロの活動も終わりに近づいているので、残り少ない機会を堪能すべく思いっきり長文を書いてみましたm(_ _)m
このような機会がなくなるのは寂しいけど、我々12期のすべきことはタキプロ魂を引き継ぐことです。しっかり我々の役目を果たし、今後は13期の方々にお任せします。受験生の皆さん、頑張ってタキプロ魂を引き継ぐ立場なってくださいね。
最後まで長文を読んでいただきありがとうございました。かわけんでした。

次回は、でこぽんさんの登場です。
お楽しみに!

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