簡単そうで難しい「SWOT分析」 by あおなぎ

事例Ⅰ

こんにちは!タキプロ17期の   あおなぎ と申します。
今回は、2次試験における「SWOT分析」をテーマにお届けします。

※本記事では、令和5年度や令和7年度の事例Ⅰの内容に一部言及しています。まだこれらの過去問を解いていない方は、ぜひ一度ご自身で解かれた後にご覧いただくことをおすすめします。

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■事例Ⅰで初めて出題されたSWOT分析

これまで中小企業診断士の2次試験において、「SWOT分析」といえば事例Ⅱの定番中の定番でした。

ですが……令和7年度の事例Ⅰ・第1問を見た瞬間、「えっ、こっちで出るの!?」と驚かれた方も多かったのではないでしょうか。
事例Ⅰにおいて、初めて「SWOT分析」が出されたのです。

なぜ、試験委員は今、この基本的なフレームワークを事例Ⅰで出題したのでしょうか。

私は、これは「生成AI時代への試験委員からのメッセージ」ではないかと考えています。
今の時代、生成AIを使えば、もっともらしい組織戦略や人事施策は一瞬で出力されます。しかし、AIが提案する戦略は往々にしてどこの会社にも当てはまるような一般論になりがちです。

コンサルタントである診断士に今求められているのは、目の前の与件文に書かれた「固有の生の事実」を正確に診断・分析する力。その原点こそが「SWOT分析」です。この基礎的な分析力がなければ、その後にどれほど素晴らしい組織論や人事施策を語ろうとも、すべては的外れな妄想になってしまいます。

この出題傾向は、今年もそのまま踏襲される可能性が十分にあると思っています。

■私が合格点を確保できた理由

「SWOT分析なんて基本だし、わざわざ対策しなくても……」と思う方もいるかもしれません。しかし、SWOT分析のような基礎的設問こそ、合否を分ける「絶対に落とせない得点源」なのです。

私自身、令和7年度の事例Ⅰ本試験で時間配分をしくじり、最終問である第4問の答案作成に入った時点で残り時間が5分を切っていました(冷や汗が止まらなかったです)。焦り散らかしながら必死にペンを走らせて何とか答案を埋めたものの、手ごたえは完全にゼロ。「終わった」と意気消沈していました。

……ですが!蓋を開けてみると結果は「69点」でA判定。

第4問で爆死したにもかかわらず合格点を確保できた理由は、ただ一つ。第1問の「SWOT分析」をはじめとする基礎的な設問で、手堅く・確実に得点を積み上げていたからに他なりません。

難易度の高い設問で周りと差をつける必要はありません。合格に必要なのは、誰もが取れる基礎で確実に1点をもぎ取ることなのです。

■SWOT分析の難しさ

「SWOT分析は確実に得点源にすべき」と言ったそばからですが、本試験の現場におけるSWOT分析は一筋縄ではいきません。

そこまで二次試験の勉強をしていなくても、SWOT分析に関してはその意味を理解していれば多少の点数は取れると思います。しかし、合格レベルの答案を書くためには、緻密かつ客観的な「切り分け」が必要になります。
まず、「SWOT」の意味は、一般的には以下のように説明されます。

  • 強み(S): 競合他社と比較した際に優れている、自社内部の資源や能力
  • 弱み(W): 競合他社と比較した際に劣っている、自社内部の資源や能力の不足
  • 機会(O): 自社の外側で起きている、業績にプラスに働きうる環境変化
  • 脅威(T): 自社の外側で起きている、業績にマイナスに働きうる環境変化

ざっくり言えば、「内部環境×プラス=強み」「内部環境×マイナス=弱み」「外部環境×プラス=機会」「外部環境×マイナス=脅威」となります。

一見簡単そうですが、きちんと練習しておかないと、本試験の緊張感の中では、この境界線が曖昧になり、迷子になってしまいます。

⑴ 自社でコントロールできるか(内因か外因か)

例えば、令和5年度事例Ⅰの第1問では、強みと弱みを挙げる問題が出題されましたが、与件文にはこのような記述がありました。

「原材料の高騰がA社の収益を圧迫」

皆さんは、この事実を「弱み(W)」として解答に挙げますか?

合格者の解答例でも、これを「弱み」に挙げているものがあります。しかし、素直に考えると、原材料の高騰は、為替や国際情勢、天候など、自社の努力だけではコントロールできない外部環境の変化のはずです。

ですので、これは「脅威(T)」に分けるべきで、「弱み」として解答に挙げる優先度は低くなります。この「自社でコントロールできるか否か(内因か外因か)」を区別できていないと、解答の軸がブレてしまいます。

ただ、ここからが診断士試験の難しい(面白い?)ところです。もしこれが、単なる原材料高騰ではなく、

  • 「原材料の高騰を価格転嫁できない【収益構造】」
  • 「特定仕入先への依存による、【原材料高騰の影響の受けやすさ】」

というA社内部の構造や体質として捉えて答案に書くなら、それは「弱み(W)」になります。
捉え方や書き方の工夫次第で、弱みにも脅威にもなり得るのです。

⑵ 機械的な決めつけをしていないか(思い込み厳禁!)

もう一つ、令和7年度事例Ⅰの与件文から。

「知育玩具の市場には、既に様々な製品が存在していた」

この一文だけ読めば、「競合がたくさんいる=脅威(T)!」と分類したくなりますよね。しかし、文脈をきちんと読むと、A社の社長はこの事実を認識した上で新規参入を決断しています。つまり、これは脅威というより、「すでに市場が存在していて、需要があることの裏付け=機会(O)」と捉えるのが適切です。ここを機械的に脅威として捉えると、A社のストーリーから浮いた「ピントのズレた答案」になってしまいます。

このように、文脈に沿って分析するには相応の時間がかかります。しかも本番では「30文字以内」などという字数制限が課されます。余計な作文をする余裕は全然ありません。

このような分析力というのは、一朝一夕で身につくものではありませんが、過去問演習などの日々の学習でやればやるほど確実に実力がつくはずです。本番を見据えて、日々の勉強の中で意識的な練習をコツコツと積み重ねていきましょう。

■与件文の「読み方」

さて、ここからはSWOT分析に関連して、私が受験生時代に与件文とどう向き合っていたか(読み方のプロセス)を参考までにご紹介します。

もちろん、解き方は人それぞれですので、正解というものはありません。もし使えそうなところがあったら使ってみるくらいの軽い気持ちで参考にしていただければと思います。

⑴ 【1回目:全体把握】シャーペン1本で、ストーリーを把握する。

昔の私は、最初から多色の蛍光マーカーを持って読み進めていました。しかしこれだと、マーカーを持ち替えるのに必死になり、全体のストーリーを見失うという本末転倒な事態に陥りがちでした。

そこで、1回目はシャーペンだけを持って、まずは全体像を掴むことに集中し、以下の作業だけ行っていました。

  1. ストーリーを追いながら、気になったところに下線
  2. 気づいたSWOTは「S」「O」などと簡単にメモする程度
  3. 「課題」になりそうなものは【括弧】で囲む
  4. 「解答に使えそうなキーワード」には☆マーク
  5. 「社長の思い・ビジョン」には波線

⑵ 【2回目:分析】マーカーを使い、一気に可視化

全体像が頭に入った2回目で、ようやく蛍光マーカーたちの出番です。

  • 強み(S): ピンク
  • 弱み(W):
  • 課題: 【青の括弧】
  • 社長の思い・ビジョン:
  • 機会(O): オレンジ
  • 脅威(T):

すでに1回目でストーリーを把握しているので、スムーズに色分けできます。

※なお、私が使用していた蛍光マーカーについてはこちらの記事をご参照ください。

⑶ 【ポイント】「弱み」と「課題」の関係

受験生の方には、「弱み=これから解決すべき課題」と同じ意味で捉えている方がいるかもしれません。もちろん、これらをイコールとして扱って答案を作成すること自体は、一概に間違いとまでは言えませんが、分析としては不十分かもしれません。

診断士の二次試験で最も重要なのは「弱み」そのものではなく、これから解決すべき「課題」です。「課題」とは、「将来なりたい姿(ビジョン)と、現状とのギャップ」のことです。

これを頭に入れて与件文を読むと、実は「3つのパターン」 が存在することになります。以下、令和7年度事例Ⅰの与件文を見ていきましょう。

「弱みかつ課題」にあたるパターン(最優先)

現状すでに自社のボトルネックとなっているし、将来のビジョン達成のためにも今すぐ解決しなければならない、最も優先順位の高い要素です。

(与件文より)
「既存事業を支えてきた社員たちは新規事業の必要性を十分には理解できなかった」
→新規の知育玩具事業を全社一丸となって推進し、軌道に乗せるという今後のビジョンを達成する上で、直ちに解決しなければ会社が分裂・停滞してしまう最優先の課題です。

② 「課題だけど弱みではない」パターン

現状は問題なく稼働しているものの、「将来のビジョンや新しい戦略」を達成するために、新しく判断・構築しなければならないギャップ(課題)です。足元の欠陥ではないためSWOT分析の「弱み(W)」には該当しませんが、他の設問でキーとなる解答要素です。

(与件文より)
「内装材と新規事業、そしてX事業をどのように連携させ、限られた経営資源を効果的に配分していくか」
→SWOT分析における「弱み(W)」とは、あくまで競合と比較して劣っている、自社内部の資源や能力の不足を指します。一方、「どう連携させ、どう配分していくか」というのは、現状の組織が崩壊しているわけではなく、事業の多角化に伴って新たに生じた経営判断事項です。そのため、「現状の不備(弱み)」ではなく、将来に向けた「課題」として処理するのが適切です。

「弱みだけど課題ではない」パターン

現状において他社より劣っている部分(弱み)ではあるものの、今後の戦略の方向性を考えると、あえて貴重な経営資源を投入して解決する必要がない要素です。

(与件文より)
「内装材事業の収益性に陰りが見え始めた」
→A社の今後のビジョンは、限られた貴重な経営資源を「知育玩具事業」の立ち上げ・軌道乗せへ集中させることです。 縮小傾向にある既存市場に対して、これ以上お金や人的リソースを割いて既存事業の収益性を改善しようとする(=課題化する)場面ではありません。リソースの選択と集中の観点から、この「既存事業の収益性低下」という弱みは、あえて解決を捨てるべき要素であり、課題ではないと切り捨てます。

このように「弱み」と「課題」は被ることもありますが、厳密には区別されるべきであり、この区別ができていないと解答要素を間違える可能性があります。そのため、私は与件文の上で、

  • 現状の単なる弱みは、シンプルに青下線
  • 弱みではない将来に向けた課題は、【青の括弧】
  • 両方に該当する「弱みかつ課題」は、【青下線+青括弧】

という風に、独自のルールを決めて、視覚的に管理していました。

■おわりに

ここまで「与件文の読み方の型」をご紹介してきましたが、私自身、受験4年目までは「最初から蛍光ペンで完璧に分析する!」というやり方にずっと固執していました。

しかし、5年目(最後の合格年)の試験直前になって、このやり方に固執していては本質的なストーリーが頭に入ってこないとようやく自覚し、長年慣れ親しんだ解き方を思い切って捨てる決断をしました。

直前に解き方を変えるのは不安や迷いもありましたが、「自分の過去のやり方に執着せず、模試や演習の結果に素直に向き合って改善したこと」こそが、合格を引き寄せた勝因だったと思っています。

2次試験の解き方に「唯一絶対の正解」はありません。

過去問を解いてみて、「また弱みを見落としてしまった」、「この課題を答案に盛り込めなかった」 という失敗が出てきたら、チャンスです。「どういうマークの付け方をすれば、この失敗が防げるか?」と実験気分で新しい方法を試してみてください。

その試行錯誤のプロセスが、本番でのあなたの「分析力」を鍛えてくれるはずです。

次回は、あっきー さんの登場です。 

お楽しみに! 

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