「実務補習」ヒッチハイクガイド by かさゐ 

みなさまこんにちは。かさゐ と申します。  
大阪在住でテレビ局勤務の非IT中年男性です。

14期タキプロブログ班員として5度目の登場となる今回は、令和4年度試験に合格した後、登録申請に必要な「実務補習」で経験したあれこれについて、地図や観光ガイドとまではいきませんが、ヒッチハイクで渡っていくためのガイドを作成しました。
合格後、実用に役立てていただけるよう頑張りましたので、目通しいただければ幸いです。

また、これまでに出稿した4本の記事も、我ながらなかなか興味深く書けておりますので、お時間あれば。

【1次試験(経営情報システム)】非IT中年の免除考

【合格体験記】令和診断士試験・炎の七番勝負

【直前・当日】1次試験3日前のオススメ心技体

【2次筆記試験】事例Ⅱは「朝ドラ」のように読む

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☂申し込み

令和5年度・実務補習は下記のように実施されています。

実施地区札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡
7月・8月・9月実施5日コース
2月実施5日コース/15日コース
https://www.j-smeca.jp/contents/005_c_jtsumuhoshu/005_R5/R5_about_jitsumuhoshu.nittei.html


合格後、最短での登録をめざすなら2月実施の15日コースを選択することになりますが、かさゐ は業務繁忙期の平日に6日休むのが難しく、登録を急ぐ必要もなかったため2月実施への参加は見送り、「夏休み」を活用しながら7月・8月・9月実施に参加することにしました。

実務補習の受付が令和5年2月実施分からインターネットのみとなり、中小企業診断協会のホームページで迷っていると申し込み開始直後にすぐ満席になると聞いたため、申し込み開始に先んじてMyページは早々に作成しておきました。

7月・8月・9月実施の申し込み開始日まで日がありましたので、余裕をもって入り口と申し込みルートを確認しておき、朝10時から落ち着いて手続きしたので、聞いていたような「即完」を食らうことはありませんでした。

どのシーズンであっても指導員の先生と5~6人の受講生という構成はほぼ同じです。
ただ、7月実施は初参加の受講生が多いため進行が不慣れで、8月・9月実施は2回目・3回目の方が増えるため各自が分担する役割を心得ており比較的スムーズだと感じました。
ちなみに、2月実施の15日コースは同じメンバーで回数を重ねるため「大変だったが、尻上がりに調子があがって充実していった」とお聞きしました。

☂実務補習前の準備等について

ノートパソコン必須ですよ、夏でクールビズでも診断先訪問時は襟のある格好を、みたいな話は先達の詳しいご報告も多いので本稿では割愛いたします。
ただ「ヒアリングの際にパソコンで速記して失礼に当たらないかどうか」についてだけ一言。
それは今時普通だとも言えそうなのですが「静かにキータッチできるかどうか」は要チェックです。
「ガチャガチャガチャ、ターン!」みたいにキーボードを叩く騒がしいキーパンチャーの自覚があったり、他人に指摘されたことのある方は避けた方がよろしいかと思われます。

さて、実施が近づいてくると「受講心得」などの資料とともに、初回参加時には「実務補習テキスト」が送られてきます。この章からはテキストの構成に準じて進めていきます。

テキストはA4サイズ100ページ足らずの小冊子で、当たり前のことしか書いていないようでいて、なかなか良くできていました。
たとえば、実務補習は、経営診断のプロセスのうち「診断」と「計画」の部分に相当すると定義づけられています。その前後のプロセスは指導員の先生が担当しますが、登録後の実務では自ら行うことになります。

その一節あたりで、以下の確信を得ました。

この「診断」や「計画」を標準的にこなせるのかどうか、これを診断士1次試験~2次筆記試験~2次口述試験~実務補習という一連のハードルで問われていたことだったのです!

つまり、試されていたのは必要な知識を身につけ、それを分析や助言に応用でき、提案することができるかどうかだったのです!!

受験生は問題文の難解なクイズ大会に参加していたわけでもなければ、キーワード盛り盛りの答案を作って加点をかすめとる競技会だったわけでもなく、ましてや、席につけば100%合格するヌルい面接を受けていたわけでもなかった!!!

もしかすると、他の受験生はもっと早い段階で気づいていたのかもしれません。
うすうす感じ始めたのが口述試験対策の頃だったうぶな自分がお恥ずかしい限りです。

さて、スタート1週間前ともなると、指導員の先生から診断先についての情報が送られてきます。

診断先から提供される資料を含めて、指導員の先生から示される情報全体を「与件」として予習しました。
たとえば、信用調査会社の発行している企業情報を見る、大きな図書館には備え付けられている「業種別審査事典」で業界平均を調べるなどといったことです。
実務補習は短期間ですから、スタート時点でメンバーの認識が白紙では、スケジュールがどんどん押して苦しくなるため、無駄打ちも含めて先読みを心がけました。

☂実務補習について

実務補習の難しさは、初見の企業に対して経営診断をするということより、見ず知らずのメンバーが短期間に一致団結してひとつのアウトプットをまとめあげる点にあると感じました。
アラフィフながら人見知り傾向のある かさゐ は、事前段階ではとくに「見ず知らずのメンバーが」に最も高い障壁を感じていました。

結果的には、案ずるより産むが易し。
目的がはっきりしている分、ただ「仲良くなる」をめざす謎の会合よりずいぶんとっつきやすかったです。
初対面までに行われる担当決めなどのやり取りの中で各人のキャラクターを読み取り、持ち前のサーバント・リーダーシップを発揮してチームの前進に貢献をした、と自負しています。

☂必要なスキルについて

診断士試験を乗り越えてきたわけですから、実務補習だからといって特別に必要になるようなスキルはありません

ただ、短期間に意思疎通する必要があるため、メンバーは「経営者からヒアリングで情報を引き出スキル」、「指導員の先生や班長含め他のメンバーの考え方を引き出すスキル」を発揮する必要があります。

また、実務補習のゴールは診断先への報告書提出とプレゼンテーションですから、期日までに「報告書」を質量とも適切なボリューム感で仕上げる必要があります。

ですから、報告書の完成のために「出そろった情報や考え方を担当分野の提言にとりまとめていく個人のスキル」「それぞれが作成した提言を一貫性や統一感のあるものにまとめていくチームとしてのスキル」等を発揮しなくてはなりません。

※ノートパソコンを使いこなすスキルは必要になりますが、本稿では割愛します。

☂報告書のとりまとめ・報告会に向けて

この章が本稿の中心です。
お時間あまりない際にはこの章のみ拾い読みしていただければと思います。

【 報 告 書 】

報告書に関して、5~6人のメンバーへの担当割り振りは、たとえば


・業界問わず章立て:「経営戦略」(班長が担当)、「財務」、「マーケ・営業」、「情報」
・規模により検討:「人事労務」
・業種により検討:「生産」、「運営」、「法務」

などとなり、1人1章を担当するのが通常です(欠員が出た場合を除く)。
初日の顔合わせまでにある程度決めておくと、各自の準備期間が増えるのでベターです。
少なくとも班長だけは事前に決めておけるといいように思います(かさゐ は班長を1回だけ経験しました)

その他に「添付資料」「表紙」などを作成する必要があるため、だれかが分担せねばなりません。
添付資料は、原稿の骨格が先に完成する班長(※)が率先して空欄補充しておきましょう。
(※)班長が悩んで経営戦略が書けないようだと各パート書き始められません。
目次も、班長を司令塔として整理するとよいでしょう。
財務に関連するページは財務担当が作成するため、他の担当より作業負担が大きくなる傾向があります。
表紙のための写真は皆でとっても、表紙作成は譲り合いになることも多いです。いざ作るとなると、自分で撮った写真が使いやすいということもあって、引き受ける勇気が全てだと思います。
人が作ってくれたものにダメ出し「だけ」するのは良くない振る舞いです。チームメンバーとは上司部下ではない、フラットな関係性です。代案がないなら口出しはやめましょう

報告書は、全体で100ページ以内が推奨されており、添付資料を除くと1人15ページ前後です。
どの章も「現状分析」⇒「課題」⇒「提言(対応策)」の3章構成が基本となります。
よりわかりやすくするために図表や写真を盛り込みますから、文章を引き延ばして長々と書く必要はありません
チームで共通の原稿用紙を用い、ページネーション、図表への付番、用語法についても、次のような「お約束(テンプレート)」を作って統一しましょう。
表記の統一感は、論理の一貫性と同じくらい大事なことです。

「お約束」の例

【 班 長 】

班長はチーム運営を主導する役割ですが、全責任を負うという大仰なものではありませんでした。
たとえばタイムマネジメントでは、その日のおおまかなスケジュールを提示し、全員の顔色を見て
「昼飯にしましょう(きょうはあの店で食べましょう)」
「10分休憩しましょう」
などと言い出すのが かさゐ班長 の役割でした(正直言って、メンバーが優秀過ぎるとそうなります)。

また、上述のお約束以外で続々と出来する用語や表現の統一について、班長は合意形成のファシリテーターを務めました。
これらはルールではなく、チーム内での取り決めとなります。


【 情報共有とマージ(一本化) 】

実務補習ではメンバー間での情報共有が重要です。
指導員の先生を含めて得意なメンバーが共有ドライブを開設して全員でファイル置き場として利用し、ファイルをじかに共同編集した回の作業効率が最も良かったです。
リモート打合せに用いるのは、ZOOMでもMicrosoft TEAMS でもGoogle MEET でも、使いこなせるならなんでもいいと思います。

仕上げの段階で、それぞれのWord等の文書ファイルを直接マージ(一本化)しようとすると、うまくいかないことがあります。
提言部分と添付書類との書式のズレがあったり、Excelページの置き換えが滞っているといったことがあるためです。
マージがうまくいかないとページネーションのズレをもたらし、目次を正しく出力することができなくなります。

解決策としては「Excelページも含めて全てそれぞれにPDFファイルとして出力してから、それらをマージするソフトを用いて一本化する」であり、このやり方は非常にスムーズでした。
さらに効率に関する余談ですが、報告書には通し番号を採用せず、章ごとにページ割り振りをしました(Ⅰ-1、Ⅰ-2…、Ⅱ-1、Ⅱ-2…、という形です)。


【 スケジュール 】

5日間の概要は下記の通りです(集合する日の活動時間は「9時~17時」)。

★初日
・顔合わせと自己紹介。(まだなら)担当決め。
・ヒアリング方針を打合せ。
・診断先ヒアリング。 
※全員のヒアリングメモを共有しその日のうちに目を通す。

★2日目
・全員でSWOT分析(内外の現状分析)のうえクロスSWOT分析(戦略の打ち手候補まとめ)
・全員で各章の「課題」と「提言(対応策)」について話し合う

★2日目と3日目の間(自主学習期間)
・報告書の原稿作成。全員で話し合った内容をベースにして一貫性を担保する。
・各担当の「現状分析」はヒアリングをベースに、各自で調べた業界事情等を加味して作成。
※経営戦略の「現状分析」は全員で行ったSWOT分析を盛り込む。外部環境については調べて補充する。
・中間で指導員の先生のチェックを受けたり、メンバーでミーティングの機会を設けてすり合わせ。
・班長や財務担当は添付資料の作成もできるだけ完成する。

★3日目
・報告書の原稿読み合わせし、内容や用語法などの全員チェック。
・修正・訂正したポイントについて相互チェック。

※早い班はこの日中にほぼ内容が確定する。

★4日目
・報告書の内容を確定。添付資料についても確認。
・それぞれPDFファイルに出力して、マージソフトで一本化(上述の通り)。
・キンコーズ、アクセア等の「オンデマンド印刷」店舗に印刷を発注。
※診断先が印刷物を要望しておられずデータ提出でOKであれば、この工程は省略OK。
とはいえ、表紙を含めて体裁を整えて提出したら喜んでいただけたので、個人的には印刷・製本オススメです。

★5日目(最終日)
・印刷受け取り。
・プレゼンの段取り確認。
・診断先でのプレゼン実施。
・反省会。※打ち上げともいいます。


【 プレゼン 】

プレゼンについては、診断先のご都合で90分~120分いただけた場合、1人の持ち時間はせいぜい15分~20分です。

聞きやすく発話するプロであるアナウンサーでも1分間300文字を超えると早口の部類に入ります
全文読み上げは時間がかかる割に、聞き手の頭にも残らないため、最ももったいない行為です。
全文読み上げはしないと心に決めて、発話できる文字数は5000字ほどのつもりで用意するのがよいでしょう。
後で読んでいただくときに重点的に読んでほしい各章の課題や提言、あるいはチームの議論でもりあがったポイントなどに絞ってお伝えしましょう。

質疑応答は最後にまとめて行うと最終章(情報戦略であることが多い)の細部に話題が集中したり、盛り上がったりします。
メリハリをつけるためにも、細かい質問の出てきそうな財務の後に一度挟んだり、あるいは聞き手の出入りがある場合に退出されるまでにお尋ねしておく、などが対応策となります。

とくに質疑が出てこなくても、診断先から各章それぞれにコメントをいただくことをお勧めします。
褒められたり興味を持ってもらえたりすると嬉しいですし、もしけなされたり落ち度に気づいたりしても後々の反省につながります。
いずれにせよ後々の診断士活動に向けたモチベーションになるはずです。

☂診断士としての成長・期待ゴール

実務補習テキストの「期待される中小企業診断士像」の一節も、非常に実践的なものです。
とくに「民間経営コンサルタントは人を見て法を説け」と断じた項には目からウロコが落ちました。
正しさを押し付けても人は動かないものです。
クライアントが行動を起こしやすくしてもらうために、これまでのコミュニケーションの方法は意識的に変えるべきだということです。

独占業務の無い中小企業診断士には、画一的な「あるべき姿」は見当たりません。
しかし、企業内診断士であれ独立診断士であれ、診断士属性を持つ者としてよりよく生きるには自己研鑽を続けるべきです。
実務補習は診断士が「取ったら終わり」ではなく、磨き続けるに値する資格だと改めて認識させてくれて、とてもナイスでした。

■おわりに

令和5年度の受験生が2024年2月実施分の実務補習に申し込むと かさゐ 同様「令和5年度版」のテキストが送られてきます。
2024年7・8・9月実施分から参加だと「令和6年度版」となります。以上の拙稿は「令和5年度版」を参照して書いたものです。
(などと、あえて元号と西暦を混在させましたが、報告書向けの原稿だったならメンバー全員にツッコまれて修正したことでしょう)

実務要件を満たした かさゐ は現在登録申請中の身です(2023年11月30日現在)。
登録後は「配信系のTV局内診断士」として、得意技であるITや広告・PR、知財管理を生かしつつ、伴走を希望していただけるクライアントに歩調を合わせ、アニメとアイドルと中世京都の歴史の拡散・浸透と業界の繁栄につながる仕事を画策していく予定です。

本稿にお目通しいただいた方々の合格を祈念しますとともに、いつかどこかでご一緒にお仕事できれば幸いです。


あしたは かやの さんの登場です。お楽しみに! 

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