経営法務 ~足切り回避するぞ!~ by MIC_KURO

経営法務

読者のみなさん、こんにちは。
タキプロ14期のMIC_KURO(クロ)と申します。今回は2回目の投稿で、テーマは「経営法務」です。

苦手意識を持っている受験生が多い「経営法務」ですが、足切りを回避するのは何(具体的にはどの法域)に注力をすればよいのか、という点にフォーカスを置きたいと思います。

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■はじめに

私は、以下の理由でこの科目を得点源にしていました。

・弁理士資格を保有(いわば知的財産のプロ)。

 →「近年の改正法」のみを中心に勉強すればよい。

・特定侵害訴訟代理業務を付記(弁護士と共同で特定侵害訴訟の代理人になれる資格あり)。

 →「令和2年度の民法大改正」を中心に勉強をし、他は重要論点のみを覚えればよい。

・実務では英文契約を扱っている(英文契約の独特な言い回しに慣れている)。

 →ノー勉で点数を稼げる。

勉強開始当初、会社法や周辺法に関する知識はあまりなかったので、これらの勉強に時間を割いていました。

一方で「経営情報システム」や「中小企業経営・政策」といった苦手科目に多くの時間が割かれており、「経営法務」の時間対効果の高い勉強法は何か?と考え、分析を進めていました。

今回は、その当時の考えを書き綴ろうと思います。

■経営法務の近年の出題傾向

以下に、過去6年間の出題傾向を示します(分類は筆者判断によります)。

改正法が施行された直後に改正法から出題される傾向が高く、配点傾向に多少のばらつきはありますが、『知的財産権法の配点は、問題全体の3分の1』はいずれの年度においても妥当する結果となっています。

そうです。知的財産権法を拾いきれば、それだけで30点を超えるのです。 あとは(鉛筆を転がしても)確率的に5分の1は正解する(=10点以上は拾える)ので、足切りを回避できてしまうのです。

■理解しておきたい知的財産権に関する基礎知識

(育成者権、回路配置利用権、商号なども知的財産権に含まれますが、少なくとも筆者は診断士試験で見かけたことが無いので、ここでは割愛します。)

①知的財産権の分類

⇒知的財産権は以下の通りに整理されます。このように整理することにより、基礎知識の定着が早くなります。

<法体系による分類>

産業財産権:特許権、実用新案権、意匠権、商標権。

✔産業財産権を取得するには、出願・権利化が必要

✔産業財産権の存続期間の起算点は、出願日か登録日になる。

(狭義の)知的財産権:著作権、不正競争防止法の保護対象(営業秘密、商品等表示)。

✔著作権の取得や不正競争防止法上の保護を得るのに、出願等の要式行為は不要

<客体による分類>

創作物(知的創造物についての権利):特許権、実用新案権、意匠権、著作権、営業秘密(不正競争防止法)。

✔創作者の創作物そのものが保護される。

 →財産権としての権利は第三者に譲渡できるが、創作者の名誉や人格に関する権利(発明者氏名掲載権、著作者人格権)は第三者に譲渡できない

選択物(営業標識についての権利):商標権、商品等表示(不正競争防止法)。

✔選択物そのものは単なる文字や記号の羅列。そこに信用が化体して価値が生まれる。

 →先使用(権)(後述)の発生要件として「周知性」が要求される。

絶対的独占権と相対的独占権

⇒以下の通り「独占権」には大きく2種類があります。

絶対的独占権・・・産業財産権。

✔たまたま同じ発明、考案、意匠、商標が複数発生したとしても、先に出願をした者(先願出願人)のみが独占的排他権を取得

 →先願主義の例外が先使用制度(出願が遅れても、出願前から善意で実施していた者の実施は確保される)。

相対的独占権・・・著作権。

✔偶然に同じ著作物を独自に創作した場合、自身の著作権の効力が相手の著作物に及ばない権利。

 →同一の著作物についてそれぞれに著作権が発生、お互いを干渉しない。

■経営法務・知的財産権法の出題形式

⇒以下の通り、経営法務の知的財産権法の出題形式には、大きく3種類があります。

①各法律の制度上の違い、要件効果の違いを問う問題

⇒各法域で適用要件が異なるものや、各法域特有の制度に関する問題が出題されます。

存続期間

✔特許:「出願」から「20年」(延長の例外あり) ←創作物:一定期間後は社会に開放。

✔実用新案:「出願」から「10年」 ←創作物:一定期間後は社会に開放。

✔意匠:「出願」から「25年」 ←創作物:一定期間後は社会に開放。

✔商標:「登録」から「10年」(更新制度あり) ←選択物:化体した信用維持のため長期の独占使用を許容

各法域特有の制度

✔特許:審査請求制度あり、国内優先権制度あり、出願公開制度あり。

✔実用新案:無審査登録制度(過失の推定は働かない、実用新案技術評価書の提示後に権利行使)、国内優先権制度あり。

✔意匠:特殊な制度(秘密意匠・関連意匠等)あり、国内優先権制度なし、類似範囲は専用権(独占排他権)

✔商標:特殊な制度(地域団体商標等)あり、国内優先権制度なし、類似範囲は禁止権(排他権のみ)、出願公開制度あり。

同制度の法域毎の要件の違い

✔異議申立期限:特許・・・公報発行から6月、商標・・・公報発行から2月

✔パリ優先期間:特許・実用新案・・・最先の基礎出願から1年、意匠・商標・・・最先の基礎出願から6月

同法域内の類似制度の要件の違い

✔不正競争防止法上の保護:

  周知表示混同惹起行為・・・「商品等表示」,「周知性」,「同一若しくは類似」,「混同のおそれ」

  著名表示冒用行為・・・「商品等表示」,「著名性」(周知よりも上),「同一若しくは類似」。

  商品形態模倣行為・・・「商品の形態を模倣」(周知の要件はない),「商品の機能を確保するために不可欠な形態で無い」,「『日本国内』において『最初に販売』された日から起算して『3年間』」。

②法律上の要件を直接問う問題

⇒法律上の要件(法律上のある効果を発生させるために必要な条件)を直接問う問題が出題されます。

・先使用(権)の発生要件

✔特許法:「独自発明」,「他人の出願の際、現に」,「日本国内で」,「事業化またはその準備」。
✔商標法:「他人の登録商標の類似範囲」,「他人の出願前から」,「日本国内で」,「その商標が使用により周知化」
✔不正競争防止法:「他人の商品等表示の類似範囲」,「他人の商品等表示の周知化前から」,「不正の目的でなく使用」

・職務発明、職務著作(会社に権利が帰属する場合の要件の違い)

✔特許法:「契約、勤務規則その他の『定めにより』職務発明について会社に特許を受ける権利等を承継させる等したとき」。
✔著作権法:「著作物の作成時の契約等において個人の著作とする等の別段の『定めがない』」。

・新規性喪失の例外規定の適用要件

✔(特許の場合)「自己の行為に起因して発明が公開」,「発明が公開された日から1年以内に特許出願」,「特許出願時に新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出」。

③企業が中小企業診断士に問い合わせをする問題(助言系問題)

⇒会話形式になっており一見複雑そうに見えますが、問われている内容は、基本的には上記①②と同じです。

■では、実際の1次試験の問題を解いてみよう

令和4年度 第8問
産業財産権法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 意匠法には、国内優先権制度が規定されている。
イ 実用新案法には、出願公開制度が規定されている。
ウ 商標法には、出願審査請求制度が規定されている。
エ 特許法には、不実施の場合の通常実施権の設定の裁定制度が規定されている。

⇒ 『各法律の制度上の違い』の問題に該当します。裁定制度についてなじみの薄い受験生が多いと思いますが、消去法でア~ウを削れます。

令和4年度 第12問
実用新案法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 実用新案権の存続期間は、実用新案登録の日から10 年をもって終了する。
イ 実用新案登録出願の願書には、明細書、実用新案登録請求の範囲、図面及び要約書を添付しなければならない。
ウ 実用新案法は、物品の形状と模様の結合に係る考案のみを保護している。
エ 他人の実用新案権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があったものと推定される。

⇒ 直接は比較されていませんが、『各法律の制度上の違い(特許法との違い)』の問題に該当します。アは特許権と実用新案権の存続期間の比較、イ、ウは特許と実用新案の保護対象の相違、エは審査主義と無審査主義の差 に関する理解を問うています。

令和4年度 第13問
以下の会話は、X株式会社を経営する甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄AとBに入る期間と記述の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。(中略) 

あなた:「その日本の商標登録出願を基礎として、優先期間内にパリ条約による優先権を主張して外国に出願する方法があります。商標の場合、優先期間は [ A ] です。…」(以下略)

『企業が中小企業診断士に問い合わせをする問題』に該当しますが、内容は『同制度の法域毎の要件の違い』に他なりません。特許、実用新案が1年に対し、意匠、商標は6月となります。

令和4年度 第14問
以下の会話は、発明家である甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話の中の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。(中略)

あなた:「発明の新規性喪失の例外規定ですね。[    ]。知り合いの弁理士をご紹介しましょうか。」(以下略)

『企業が中小企業診断士に問い合わせをする問題』に該当しますが、内容は『法律上の要件を直接問う問題』に他なりません。新規性喪失の例外規定の適用要件を直接問うています。

■おわりに

いかがでしたでしょうか? 

苦手意識を持っている受験生が多い「経営法務」ですが、知的財産権法をしっかりと仕上げると、足切りを十分に回避できることがお分かりいただけたかと思います。

上記のとおり、知的財産権法の出題形式はほぼ決まっていますので、基礎知識を理解した上で、過去問に登場した論点を、出題形式を意識した上で整理してみてはいかがでしょうか。

令和4年度の経営法務は易化したと言われていますが、知的財産権法に関しては、これまでどおりスタンダードな問題が揃っていたと思います。

令和4年度の反動で令和5年度は難化するのではないか、と気になるところですが、個人的には、知的財産権法の難易度が乱高下することはないのではないか、と思っています。

1次試験まで残すところ約1月、回答できる問題を一つでも増やし、合格をもぎ取ってください!

次回はりょおさんの登場です。
お楽しみに!

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